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2015.09.13

川原正敏『修羅の刻 昭和編』第1回 二つの意味で門の延長戦上の物語

 数ヶ月前に続編『第弐門』が大団円を迎えた異種格闘漫画『修羅の門』。その外伝とも言うべき『修羅の刻』の新作が、実に10年ぶりに(!)今月からスタートしました。これまで様々な時代を描いてきた『刻』の新作の舞台は、昭和――『門』の主人公・陸奥九十九の親たちの世代の物語であります。

 千年不敗の伝説を持つ古武術・陸奥圓明流の現代における伝承者・陸奥九十九が、様々な格闘技に挑む姿が描かれた『修羅の門』。
 その外伝たる『修羅の刻』は、古くは平安時代から、戦国時代、江戸時代、幕末、明治、時には開拓時代のアメリカなど、様々な時と場所を舞台に、その時代の陸奥圓明流の伝承者の姿を描いてきました。

 最初に次の『刻』が昭和編と知った際には、九十九の祖父・真玄の話かと思いきや、この第一回を見た限りでは、メインになるのは、九十九の父の世代。
 陸奥と対になるもう一つの圓明流、不破圓明流の流れを汲む現(うつつ)と、かの前田光世の流れを汲むケンシン・マエダ――九十九の母と縁があったという二人であります。

 とある町で繰り広げられるヤクザ同士の抗争。父の縁で片方の助っ人に駆り出された現は、そこに割って入った凄まじい気迫を持った青年――ケンシン・マエダと出会うこととなります。
 敵対組織の擁する超実践派の古武術家を苦もなく叩きつぶしたケンシンは、陸奥圓明流を探しているというのですが……

 というあらすじのこの第一回、時代的にはある意味『門』と地続きながらも、格闘漫画では定番ながら、そちらではほとんど描かれなかった(野試合はありましたが)暴力のプロが絡んだストリートファイトがメインというのが目を惹きます。

 そもそも、人殺しの技……というのが過激であれば、試合ではなく実戦の場での使用を前提とした陸奥圓明流。
 それが現代格闘技に対し、そのルールを踏まえた上で挑むというのが『門』である一方で、制限なしで振るう場を設定したのが『刻』と言ってよいかと思いますが、なるほど、おそらく高度成長期あたりの時代でそれを描けば、こういうシチュエーションになるのでしょう。

 その一方で、それぞれの時代の伝承者が、様々な歴史上の有名人や事件に絡むというのが『刻』のより明確な特徴であり、魅力であったかと思いますが、それは本作においてはさすがに苦しいように思われます。

 だとすれば、本作で描かれるのは、二つの意味で『門』の延長線上の物語――『門』にも登場した登場人物たち(その中には九十九の父もいるわけですが)の若き日の姿と、我々のよく知る日常のすぐ外の暗がりで繰り広げられる彼らの戦いの姿なのでしょう。

 あるいは、『門』の前日譚にして締めくくりのエピローグになるのか……そんな予感もありますが、まずは『第弐門』ラストに感動させられた人間として、そこに続くものを期待したいと思うのであります。


『修羅の刻 昭和編』第1回(川原正敏 『月刊少年マガジン』2015年10月号掲載) Amazon
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