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2015.09.23

吉川うたた『鳥啼き魚の目は泪 おくのほそみち秘録』第4巻 ついに明かされる芭蕉隠密説の謎!?

 かの松尾芭蕉と河合曾良の「おくのほそ道」の旅を新解釈で描く漫画の第4巻であります。旅もいよいよ半ばを過ぎたと言うべきか、松島、平泉を越え、山形に入った二人は、相変わらず現世と異界、それぞれの存在に振り回されることになります。

 歌枕を訪ねての静かなものとなるはずだった二人の旅は、冒頭から波乱続き。お馴染み(?)の芭蕉隠密説を行く先々で疑われて足止めを食ったり、「視える」体質である芭蕉が様々な亡魂や異界のモノにつきまとわれたり……
 特に第3巻では、そんな存在に引っ張られて芭蕉が恐山に飛ばされたりと、とんでもない事態となった(もちろん無事に帰ってきましたが……)ところであります。

 さて、そんな大事件が発生したり、歴史上の有名人(の霊魂)が登場した第3巻に比べると、比較的おとなしめの旅となったこの第4巻。
 尾花沢、山寺(立石寺)、最上川、出羽三山と続く旅は、一種散文的と申しますか、紀行文的な内容にも感じられます。

 と言っても、もちろんこれまでに比べれば、というお話。尾花沢では、恐山で出会った佐々介三郎との再会あり、山寺では慈覚大師(登場の仕方に仰天)やマタギの元祖の霊との対面あり、死と生の再生の場とも言うべき出羽三山でももちろん……と様々な事件が彼らを待ち受けます。

 そんな中で、この旅が歌枕を訪ねる旅であると同時に、死者たちの声を聞く旅であることを再確認する――そしてその中で、彼にとって忘れられぬ人である藤堂良忠の存在を思い出す――芭蕉の姿は、本作ならでのものと言えるでしょう。


 が、今回一番インパクトが大きかったのは、芭蕉隠密説への本作なりの答えが示されたことではありますまいか。
 およそ隠密らしくない脳天気であけっぴろげな本作の芭蕉ですが、その一方で何やら意味ありげな態度を見せる曾良。そんな二人の真実がここで明かされるのですが、なるほどそう来たか、という線で実に面白い。

 そしてまた、行く先々で芭蕉と曾良の前に現れるマタギの七郎次がこの巻のラストでさらりと口にする言葉は、二人の旅の中にある異界と現世の思わぬ接点を語るものであり――そしてそれはこの旅をある意味象徴するものであると感じた次第です。
(その前の曾良の「どうしてどいつもこいつも私たちの行く先や日程まで詳しく知っているんだ?」の言葉には苦笑)

 二人の旅も後半に、北陸の旅に入りますが、個人的には東北の旅という印象が強かったこの「おくのほそ道」で何が待ち受けているのか……史実の上でも、フィクションの上でも、楽しみになります。


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