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2015.09.30

映画『るろうに剣心 京都大火編』 派手に、多様に展開するキャラとアクション

 劇場公開のほぼ一年後という今頃で大変恐縮ですが、実写映画『るろうに剣心』の続編、二部作の前編であります。原作の京都編――明治の京都を舞台に、志々雄真実一派と剣心たちの戦いを描く本作は、サブタイトルの通り、志々雄一派による京都大火の陰謀に挑む剣心と仲間たちの姿が描かれます。

 前作に当たる実写版の『るろうに剣心』は、剣心役の佐藤健、左之助役の青木崇高など、はまり役の役者によるビジュアルと、谷垣健治による派手なアクションと、ギリギリのリアリティラインで原作のイメージを再現して見せたのが、印象的だった作品。

 前作で映画化された部分は、原作の流れからすればある意味序章的位置づけであったのに対し、今回の京都編は、ストーリー的にも登場キャラ的にも大いに派手に、大いに盛り上がったくだり。
 それだけにこちらの期待も大きいわけですが、まずキャスティングの時点で期待通りというか、期待以上の顔ぶれであります。

 ほとんど顔が出ないキャラでここまで自己主張できるのはこの人位だろうなという志々雄役の藤原竜也、このキャラを演じられるのはこの人以外いないと思っていた瀬田宗次郎役の神木隆之介、ビジュアル的にはまさにそのものの四乃森蒼紫役の伊勢谷友介……。
 さらに翁役の田中泯、巻町操の土屋太鳳、そしてラストに登場のあの人まで、よくもまあここまではまり役を集めたものと感心いたします。
(その反面、宗次郎と張、方治以外の十本刀は誰が誰やら……)

 ストーリー的には、大久保利道暗殺から剣心の旅立ち、新月村の惨劇から剣心と宗次郎との初対決、新たな逆刃刀の登場から京都大火を阻むための決戦へ……と、ほぼ原作通りの流れ。
 個人的に好きだった左之助の修行のエピソードが省かれていることと、何よりも新月村のエピソードと逆刃刀を手にする際の刀狩りの張との対決に尺を取りすぎの印象はありますが、それなりに必然性があってのことと理解できます。
(何よりも張との対決は、あの漫画的キャラをほとんど完全に再現してみせた三浦涼介が見事)

 そしてそこに散りばめられたアクションも、前作以上にキャラクターが増えた分、さらに派手に、多様に展開されていて大満足。
 剣心の走る→スライディングする→跳ぶ→斬るのムーブは相変わらずのスピード感ですし、更に今回はそれと互角以上に戦える宗次郎が登場したのも嬉しい(相変わらずのチャンバラしながらの蹴り技には馴染めませんが……)

 しかしそれ以上に、翁と蒼紫の激突シーンは、屋内を移動しながらの殺陣というなかなかに難しいシークエンスを活かしつつ、上下左右にこちらの想像を超える殺陣を見せてくれたという点で、原作を超えるインパクトがあったかと思います。
 もう一つ、土屋太鳳の想像以上の身体能力も素晴らしく(こちらは徒手なので蹴りを使いまくってもOK、というか大歓迎)、ことアクションシーンについては、こちらの期待を遙かに超えるものを見せていただきました。
(ちなみに土屋太鳳、蒼紫が目前で翁を倒し去っていく場面で、原作者であればこう描くであろう、と感じさせるような表情を見せていたのにも感心)

 また物語描写やキャラクター解釈についても、個人的には前作の――特に剣心の――どうにもリアルというより辛気くさいムードに強く違和感を感じていたのですが、作品の重点をノンストップアクションに振り向けることで、うまく中和してきた印象があります。

 しかし、特に終盤の志々雄の描写などは気になる点もあったのは事実。あのプライドの塊のような志々雄が、自分と同じ姿をした者たちの集団を剣心に差し向けるか? 人質をとって剣心の動きを封じ、十本刀に襲わせるか? やけに志々雄が小さい敵に見えたのも事実。
 さらに言えば方治のキャラ崩壊もひどいもので……映画と同時期に発表された志々雄サイドを描いた裏幕の小説版での方治の描写が良かっただけに、残念であります。


 などと気になる点はあったものの、総じては前作以上に楽しめた本作。ラストは監督的に出るのではないかな、と思っていたら本当にあの大物が登場という最高の引きで物語は後編に続くわけですが……さて、色々と評判を聞く後編はいつ見たものか、思案しているところであります。


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