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2015.10.08

玉井雪雄『ケダマメ』第4巻 そして「二人」の向かうべき「未来」

 一人の少女の血筋を守るため、時代を超えて現れ、戦う男・ケダマメを描く本作もついに最終巻。鎌倉時代での戦いを終え、次に描かれるのは昭和初期の玉の井での物語。そこで示される意外な真実を踏まえ、物語は最終章である近未来に繋がっていくこととなります。

 遺伝子の暴走により、人類と他の種との遺伝子の混淆が始まり、人類という種が危機に陥った未来。
 本作の主人公・ケダマメは、その状況を打開すべく、オリジン種と呼ばれる純粋な遺伝子を持ち帰るために過去に飛ぶ者たち――ゲノムハンターの一人であることが、これまでの物語で語られました。

 そして、鎌倉での戦いでオリジン種である少女・まゆを救ったケダマメの物語の次なる舞台は、昭和初期――戦前の私娼街・玉の井。そこで育った少女・まゆみを巡り、ケダマメと彼を先輩と呼ぶ男・サワダの対決が描かれることになります。
 かつて――江戸時代、やはりオリジン種を持つ一人の遊女を巡り、因縁持つケダマメとサワダ。ケダマメに復讐すべくまゆみに近づいた彼は、巧みにケダマメをおびき出すのですが……しかし、二人の対決は、思わぬ方向に転がっていくこととなります。

 ケダマメとの戦いの中でサワダが語る未来の真実――それはケダマメのこれまでの戦いを根底から覆すもの。
 そしてそれは同時に、彼が悠久の時の中で守ってきたオリジン種を持つ少女の存在の意味……すなわち、彼女たちが生きる意味をも百八十度反転させるものであります。

 それを知ってなお、ケダマメは戦えるのか。そもそも、彼は何のために戦うのか……それは、昭和編の次に語られる未来編にて描かれることとなります。
 21世紀も終わりに近づいた頃、未来の希望もなく、老いた祖母と妹を抱えて生きるまゆかの前に現れたケダマメ。彼が彼女に与えた選択肢とは……


 奇怪な能力を持つ時代活劇と見せつつ、その背後に人類の未来をかけた壮大かつ壮絶な物語を描き出して見せた本作。
 その掉尾を飾るこの第4巻のエピソードは、しかし、駆け足であった感は否めません。

 未来の真実と、それがケダマメにもたらすもの。そしてそれを踏まえてなおも強い意志を持って前に進もうとするケダマメの姿と、彼が守る少女たちの選択。そして最後の最後に暗示される、一種の巨大な運命の逆転とも言うべき真実――
 それら一つ一つが実に印象的かつ魅力的であるだけに、実際の作品では一種説明的に語られてしまうのが、残念でなりません。

 せめてあともう1巻分あれば、というのは素人考えではありますが、もう少しこの辺りを描くのに分量的な余裕が欲しかった……というのは、正直な気持ちであります。
(昭和編で言及される歴史上の事件との絡みも実に興味深いだけになおさら……)

 しかしそれでもなお、同時に、本作は描くべきものはギリギリまで描ききったという印象は確かにあります。

 人類という種のためという、マクロな大義名分のために行動しながら、いつしか一人の少女を生を守るという、ある意味極めてミクロな目的のために命を賭けるケダマメ。そして彼の想いを受けて、苦しく孤独な生の中で、己の存在する意味をを見つめ直す少女――
 その両者の運命の絡み合いの行き着く先を、本作は最後まで描いてみせたと感じるのです。

 あるいは当初はもっと別の時代を舞台とした物語が構想されていたかもしれません。特に(これは明確に描かれるべきかはわかりませんが)この巻で言及された現代を舞台とした物語は見てみたかったという気持ちは強くあります。
 それでもなお――「二人」の向かうべき「未来」を提示してみせた本作は、それなりに美しい結末を迎えたと、私は感じるのであります。


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