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2015.10.01

『絵でみる江戸の妖怪図巻』 ある意味オーバースペックながら楽しい一冊

 最近、文庫やペーパーバック等で妖怪のガイドブックをよく見かけます。妖怪好きとしては大いに気になりつつ、なかなかチェックできずにいたのですが、「時代小説のお供に」と銘打たれていたら見逃すわけにはいきません。そして手に取ってみれば、これがなかなかにユニークかつ充実の内容であります。

 「時代小説のお供に」シリーズは、廣済堂が新書サイズで刊行しているガイドブックシリーズ。
 これまで『イラスト・図説でよくわかる江戸の用語辞典』『絵でみる江戸の町とくらし図鑑』『絵でみる江戸の人物事典』『絵でみる江戸の女子図鑑』となど刊行されてきたところで、今回、妖怪が登場ということになります。

 さてその本書ですが……これまで妖怪時代小説についてはかなり読んできた私の立場から申し上げさせていただければ、これはいい意味でオーバースペックの一冊。
 ここまでの知識を必要とさせる妖怪時代小説はほとんどまったく存在しないと申しましょうか……つまり言い換えれば、本書がそれだけ充実した内容ということであります。

 本書に収録されているのは、妖怪1237種・異名384種。ページ数は三百数十ページですので、一項目辺りはかなり小さいのですが、とにかく数を盛り込もうというその意気や良し。
 特に、亜種(とここでは便宜上申し上げますが)が多い妖怪――小豆洗い、天邪鬼、海坊主、鬼、怪火、河童、木魅、座敷童、天狗、人魚、化け狐、化け狸、化け猫、船幽霊、蛇・龍などは、それらを一カ所にまとめて掲載しているのも、楽しいの嬉しいのです。

 そのほか、本州だけでなく、アイヌ伝承や琉球の妖怪にかなりの項目数を割いているのも、個人的にはありがたいところでした。

 しかし本書の最大の特徴は、ほとんど全項目に付されたイラストでしょう。全てカラーなのには驚かされますが、どこか緩さを感じさせるテイストが実にいい。

 元々は「概念」に名前を与えることによって生まれた存在が多くの妖怪の発祥かと思いますが、そこにビジュアルを与えたことで、一種のキャラクター化が為され、大いに普及することになったことは言うまでもありません。
 それを思えば、妖怪本にビジュアルは必要不可欠な要素ですが、その点でも本書は十分魅力的と感じます。


 もっとも、本書をはじめとする妖怪ガイドブックは、同じような底本を参考にしていることがほとんど。本書の解説やイラストも、正直に申し上げれば、どこかで見たものが大半ではあります。
 その意味では、妖怪マニアの方には不満が残るかとは思いますが、とっかかりとしては、なかなか面白い一冊ではないかと思います。

 ただ個人的に勿体ないと思ったのは、「時代小説のお供に」と謳いつつ、具体的に時代小説に絡めた解説記事等がなかったことでしょうか。
 もちろんあくまでも本書は時代小説の参考に妖怪を紹介する本であって、時代小説そのものを紹介するコンセプトではない、ということかと思いますが、類書へのアドバンテージになる要素にもなったのではないかな、とは感じました。
(妖怪基本用語集や江戸時代の国境といった企画ページはそれなりに面白かっただけに……)


『絵でみる江戸の妖怪図巻』(善養寺ススム 廣済堂出版) Amazon
絵でみる 江戸の妖怪図巻

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