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2015.12.11

風野真知雄『大奥同心・村雨広の純心 3 江戸城仰天』 決戦、第三の御三家

 2年おきに刊行されてきた『大奥同心・村雨広の純心』シリーズの第3巻にして完結編であります。幼き将軍・徳川家継を守るため、新井白石と間部詮房によって集められた大奥同心たちの戦いもいよいよクライマックス、新たなる御三家の刺客を向こうに回しての戦いの果てに村雨広を待つものは……

 わずか5歳で将軍に就任した家継を狙う魔手を阻むため、家継とその生母・月光院の警護のために集められた大奥同心。
 忍びの志田小一郎、弓術使いの桑山喜三太、そして新当流の剣士である村雨広の三人は、これまで紀伊、そして尾張の忍者団を退けてきました。

 彼らの活躍により、ほとんど壊滅に近い状態となった両家の忍者団ですが、紀伊・尾張と来たら……ということでありましょうか、次なる刺客として、水戸の忍びたちが新たな敵として出現することとなります。
 かの水戸光圀を陰から支え、彼の性格を反映して遊芸をベースにした術を得意とする水戸の忍びたちは、ライバルが半ば自滅していった中、その特性を生かして家継に迫ることに……

 一方、大奥同心側は、紀伊と尾張の状態を見て反転攻勢に出て、両者を誘き出して共倒れを狙います。しかし月光院の腹心たる絵島は吉宗に通じ、さらに役者の生島新五郎に溺れる有様。獅子心中の虫を抱えた大奥同心たちも、大きな犠牲を払うことになります。


 実はタイトルほど「江戸城仰天」というわけではないのですが(あることはあるのですが比較的あっさり目)、しかし「仰天」という点では間違いなく仰天の連続であった本作。

 大奥同心側の策に載せられた者たちの「頂上対決」は、やはりとんでもないインパクトでありますし(同じ作者の別のシリーズを想起する方もいらっしゃるのでは)、意外かつ人物配置を考えれば納得のラストバトルの戦場も面白い。
 登場人物面では、大奥同心側よりも紀伊側――吉宗と絵島の描写が印象に残るのはちょっと意外ではありますが、敵方のキャラクター造形も、どこかペーソス漂う人間臭さがあるのは、いかにも作者らしいところでしょう。

 しかしながら、やはり本作も前作同様、些か駆け足という印象があるのも事実。登場人物が多く、派手な展開の連続のため、楽しめることは間違いないのですが、もう少し時間をかけて描いて欲しかった部分はあります。
 その最たるものが、主人公たる村雨広と、彼のかつての恋人の月光院の触れ合いなのですが……ラストはこれ以外の道はなかっただろうとは思うものの、そこに至るまでをもう少し見せて欲しかった、という印象はあるのです。

 最後の最後で、これまた仰天の展開を投入してくるのは、それはそれで本作らしい結末だとは思うのですが――


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