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2015.12.17

『牙狼 紅蓮ノ月』 第9話「光滅」

 手元不如意となり、やむなく番犬所から仕事の周旋を受けた雷吼は、光を吸い取る炎羅と対峙することとなる。炎羅を倒したものの、黄金の鎧の光を吸い取られた雷吼は、人が変わったように粗暴な振る舞いを見せる。雷吼を救うため、星明が訪れたのは、かつての師・道摩法師の下だった……

 アバンタイトルで描かれるのは、少女時代の星明。第7話で語られた母の一件で安倍家を飛び出した彼女は、自己流で炎羅相手に腕を磨いていたのであります。しかし素質はあるとはいえまだ子供、窮地に陥った彼女を救ったのは、現在は道摩法師を名乗る男。魔物を倒すための力を手にするため、弟子入りした彼女に、道摩は「星明」の名を与えるのでありました……

 と、時は移って現在、金に困って食うや食わずの状態となった雷吼は、番犬所の稲荷のもとに、仕事の無心に出かけます。(前々回の星明といい、微妙に所帯じみた彼ら……)
 そこで与えられた任務は、何やら厄介な炎羅退治。巨大な眼のような姿で、光を吸い取り闇を生み出す炎羅に対し、早くも黄金の鎧をまとって立ち向かう雷吼ですが……

 いつもより早く変身したり必殺技を使った時は危ない、の法則はここでも当てはまり、何と鎧の光を炎羅に吸い取られてしまう雷吼。ザルバの助言で何とか倒した時には既に全ての光は失われ、即席の暗黒騎士が誕生してしまうのでした。
 そのまま意識を失った雷吼の身を案じるも、しばらくして彼が目を覚ましたことに安堵する金時ですが……しかし、目覚めた雷吼は、普段の折り目正しい好青年とはまるで別人。ガツガツと大量に飯を喰らう、牛車の姫君をナンパする、喧嘩と見るや飛び込んで被害を増やす――挙げ句の果てに強請りまがいのことまでして大金を手にするとやりたい放題であります。

 稲荷から、雷吼の異変は鎧に染み込んだ闇の邪気を吸い込んでしまったためであり、やがて彼の正気も失われてしまうと聞かされた星明は、術で雷吼を縛すると、単身、闇を操る力を持つ術師のもとに向かうのでした。そう、かつての師・道摩法師のもとへ。

 しかし道摩法師といえば、あちこちで炎羅の封印を解いて回る芦屋道満の師。すなわち星明と道満は姉弟弟子ということになるわけですが……この手の師弟・弟子同士の関係が円満なはずもありません。星明に敵意をむき出しにする道満ですが、しかし道摩は星明を迎え入れます。
 かつて師弟を超えた関係にあった星明の身が、光も闇も受け入れることができることを知る道摩。その彼から、闇を自分の体の中に取り込んで封印せよと術を授けられる星明ですが……しかしそれは己の身が、決して消えない闇に侵されるということでもあります。

 冒頭に述べたとおり、かつて彼女は「星明」の名を与えた道摩。闇の中に輝く星明かりがあればこそ、闇はより深まる――光を用いて闇を強めんとする道摩ですが、しかし一片の光も認めないという道満は、師とはまた別のものを目指している様子……

 という、おそらく今後の重要な伏線であろう部分はさておき、逃げ出した雷吼は半ば正気を失ったような状態。そこに駆けつけた星明の言葉で牙狼の鎧を召喚したものの、その身はやはり暗黒騎士状態で……
 と、その状態の雷吼を抱きしめ、闇を自分の中に取り込んでいく星明。肩口を牙狼の牙に噛みつかれても(こういう使い方は面白い)離さず抱きしめ続けた星明の力で、ついに鎧は黄金の輝きを取り戻すのでありました。

 元の快活な青年に戻った雷吼と、それを喜びはしゃぐ金時。しかし星明が、その身に生涯消えることはない闇を取り込んだことも知らずに――


 お堅い雷吼が自分の欲望剥き出しに変わってしまい、ギャグ的な面もある今回ですが、やはりメインとなるのは、星明と道摩のドラマ。その出自と戦う理由が描かれ、大体の過去は語られたかに見えた彼女ですが、その師が実は道摩だったのには驚きであります。

 そしてその道摩も単なる親切心や愛情で彼女を育てたのではなく、そこに彼なりの打算というか、闇を求める心があるのも興味深いところ。『牙狼』という物語は、魔戒騎士・魔戒法師も含め、闇と光の間で揺れる人々の姿を様々な形で描いてきましたが、それは本作においても共通というところでしょう。

 それにしても本作の雷吼と星明の、相棒のような姉弟のような、親友のような恋人のような……はないかもしれませんが、独特の関係性は面白い。己の身を闇に染めつつも雷吼を救おうとする星明の想いの根幹がどこにあるのか――その点も気になるところであります。



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