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2015.12.22

片倉出雲『女賞金稼ぎ 紅雀 血風篇』 美しき復讐行の幕開け

 うら若い女の身で裏世界にその人ありと知られる賞金稼ぎ・紅雀。元は武家の娘であった彼女には、凶族・高波六歌仙に両親と弟を皆殺しにされた過去があった。老抜け忍の下で修行を積み、復讐の旅に出た彼女が訪れたのは本庄の宿。そこでは高波六歌仙の一人が宿役人の屋敷に立て籠もっていたが……

 久々の片倉出雲の登場であります。
 時代ハードボイルド『勝負鷹』シリーズを引っ提げて登場した覆面作家・片倉出雲。ベテラン作家の変名と言われ、それも納得の独創的かつ魅力的な物語を矢継ぎ早に発表してきた作者は、しかしこの数年新作を発表することなく、寂しい想いをしていたのですが……ここに復活したのであります。

 そんな待望の本作は、もちろん時代ハードボイルド。帯に記された「「修羅雪姫」の凄み×「キル・ビル」の迫力」の煽り文句が全てを物語る、バトルヒロインの鮮烈な復讐行が展開されることとなります。

 中山道は本庄宿――番所の高札に「助け求む」の張り紙が出され、それを目当てに無数の賞金稼ぎたちが集まり、一触即発の空気となったそこに、一人の股旅姿の人物が現れたことから物語は幕を開けます。
 自分に絡んできた三人組の賞金稼ぎを瞬く間に屠ったその人物こそは、本作の主人公・紅雀――うら若き女性ながら数々の殺人術を身につけ、賞金首たちから恐れられる彼女もまた、他の賞金稼ぎ同様、宿の宿役人・風屋喜兵衛の下にやってきたのであります。

 数日前から、風屋の娘を人質に屋敷に立て籠もっているという凶賊。彼らを討ち、娘を取り戻すために、紅雀は莫大な賞金で招かれたのですが――しかしそこで待ち受けていたのは思わぬ出会い。そう、立て籠もっている犯人は、彼女の仇である・高波六歌仙の一人だったのです。

 元は高崎藩勘定吟味役の娘・お香として生まれた紅雀。なに不自由なく育ってきた彼女は、しかしある晩突如屋敷を襲ってきた六歌仙一味により、全てを奪われてしまったという過去を持っておりました。
 弟に庇われ、深手を負いながらも只一人生き延びたお香は、抜け忍にして賞金稼ぎの男・黒鳶に助けられ、彼の弟子として、復讐の一念から苛烈な修行を乗り越えたのであります。

 かくて、賞金稼ぎとして旅を続ける傍ら、六歌仙の手がかりを追って旅を続けてきた紅雀。そしてついにここ本庄宿で、その一人・天城の深十郎を追いつめたのですが――


 ハードでドライな世界観と物語、そして緻密かつ派手なアクションが満載の片倉作品。しかしその魅力はもう一つ、主人公が挑む事件の背後に存在する謎の存在――一種のミステリ的趣向にもあると感じます。
 そしてその魅力は、本作でも健在であります。

 果たして深十郎は何故本庄宿を襲ったのか。そして逃走せずに風屋の屋敷に立て籠もっているのか。何故風屋は八州廻りなどの役人を呼ぶことなく、紅雀たち賞金稼ぎを集めたのか……
 アクションの陰でつい見過ごしてしまいそうになるこれらの謎に回答が与えられ、そこからさらに物語が広がっていく終盤のどんでん返しはなかなかのインパクトであります。

 意外とあっさりと決着がついたと思いきや、そこから幕が上がる真のクライマックスも、まさしく「血風」の語に相応しい大殺陣と言えるでしょう。


 シリーズ第一弾であり、物語の基本設定である紅雀の過去を描く部分に分量を割いたことで、物語構造自体は――上に述べたとおり、捻りを巧みに効かせつつも――いささかシンプルな印象もある本作。

 しかし、紅雀の復讐行はまだ幕が上がったばかり。残る六歌仙は何処に、そして彼女の死闘の行方は……物語の続きは早くも来月、二ヶ月連続刊行で登場であります。


『女賞金稼ぎ 紅雀 血風篇』(片倉出雲 光文社文庫) Amazon
女賞金稼ぎ 紅雀 血風篇 (光文社時代小説文庫)

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