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2015.12.10

海野螢『はごろも姫』下巻 ボーイミーツガールから奇想の彼方へ

 先日紹介いたしました『はごろも姫』の下巻、完結編であります。時は平安、虚ろ舟とともに現れた謎の少女・さくやと出会った少年・龍之介の冒険はいよいよ佳境。羽衣を追って京に向かった二人ですが、事態は意外な方向に展開。全ての登場人物の運命を飲み込んで、結末に向かうこととなります。

 富士山の噴火によって親を失い、盗賊の一味に加わっていた龍之介が、役人に追われて逃亡中に三保の松原で出会った少女・さくや。
 見ず知らずの間柄ながら、不思議と龍之介に懐いた彼女に引っ張られるように、龍之介は「羽衣」を追って東奔西走することとなります。

 どうやら羽衣は、さくやとともに現れた虚ろ舟を持ち去った都良香とともに京に向かったらしいと知った二人は京に向かうのですが、その途中にかつての龍之介が加わっていた盗賊団の連中たちが立ち塞がります。
 謎の女・かごめの助けで京に辿り着いた二人ですが、都で彼らを待つのは、良香の背後にいた菅原是善、そしてその子・道真。そして道真は、羽衣の在処を知るために、不思議な力を持つ仮面の女・鈿女に依頼を……


 というわけで、全ての登場人物が京に集って始まる下巻ですが、そこで描かれるのは、京を、日本各地を地震をはじめとする天変地異が襲い、物語が大きく動き出す様。

 龍之介とかごめの奮闘空しく奪われてしまったさくやの身柄。天変地異の中心たる――そして物語の始まりたる富士山に向かい、さくやは、人々は。今度は東へ東へ向かうことになります。
 果たして羽衣はどこにあるのか。羽衣の力を引き出すために鈿女が使わんとする三種の神器とは。さくやは、かごめは何者なのか。そして何故さくやは龍之介を選んだのか……

 というところでハタと弱ってしまうのは、この辺りを仄めかすだけでも物語の真相に踏み込んでしまうこと。
 その中で問題ないであろう範囲で申し上げれば、なるほど、ある意味最初から答えは提示されていたのか! という驚きが待ち構えていた、ということになるでしょうか。

 正直なところ、後半の物語展開は良く言えばスピーディー、厳しく言えば性急で、気がつけば結末に辿り着いていたという印象はあります。
 しかしボーイミーツガールから始まり、中央の政争を巻き込み、あれよあれよという間に物語がスケールアップし続け、壮大なファンタジーとして着地した、いや彼方に飛翔したのは、評価できます。(冷静に考えたらあの方々は天女ではないのでは、という気はいたしますがそれはさておき)


 ただ、上巻の紹介で触れた、主人公サイドの印象が弱い点が、物語終盤まであまり変わらなかったように感じられたのは、個人的には残念なところ。
 もちろん、物語が進むにつれて主人公に自覚は芽生えてはいくのですが、もう少し活躍して欲しかったな……という気持ちは、正直なところあります。
(むしろ第二ヒロイン扱いとなってしまった彼女の方が印象に残った次第ではあります)


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 海野螢『はごろも姫』上巻 天女と羽衣と虚ろ舟と

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