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2016.01.16

近藤五郎『黄金の剣士 島原異聞』 お家再興と秘宝探しと……正調時代伝奇活劇見参!

 時代小説レーベルの中では、比較的、いやかなりソレ系統の作品が多い白泉社招き猫文庫ですが、しかしはっきりと「伝奇活劇!!」「超時代活劇!」という文字があると、心も躍ります。というわけで、島原の乱から始まる因縁の中で、若き美剣士たちが怪事件に巻き込まれる、正調時代伝奇活劇であります。

 亡き父と同じ帰天合一流の剣を継ぐ道場に入門するため、江戸に出た青年剣士・十束輝之丞。師範の藤森数馬に父譲りの技を認められ入門を許された輝之丞は、その晩、雨夜孫兵衛なる怪人に誘き出された彼は、覆面の一党の襲撃を受けることとなります。この襲撃は容易く撃退した輝之丞ですが、しかし彼の周囲では、その後も怪しい影が出没することになります。

 実は彼と師は、約六十年前の島原の乱の際に奮戦した古賀家ゆかりの者たち。
 乱の際に切支丹の妖術師・金鍔次兵衛を討ち果たしたものの、讒言にあってお取り潰しとなった古賀家再興のため、輝之丞たちは密かに集まったのでした。そしてその証に、彼らの身には刻印が施されていたのであります。

 しかし、同志であるはずの道場の若き麒麟児・常磐主水は不可解な言動を示し、そしてなおも続く孫兵衛の暗躍。お家再興のためにすがった当代の松平伊豆守も何やら当てにならず、かつて古賀家を陥れた旗本・青沼家も輝之丞に触手を伸ばしてきます。

 果たして敵の正体は何者なのか。主水は敵なのか味方なのか。次兵衛の金の鍔に隠された謎とは、そして輝之丞自身が秘めた重大な秘密とは……!


 と、なるほどあらすじを見れば、確かにこれは直球の伝奇時代劇。お家再興、切支丹の秘宝探し、妖術師との対決……と、古き良き時代伝奇小説の要素が本作には詰まっています。
 むしろその「古き良き」が、新しさにすら感じられる点もあり、これは伝奇者としては大いに喜ぶべき点であります。

 その一方で、ある意味予定調和的部分も目につきます。登場する人物やアイテムの使われ方、作中に散りばめられた謎等、ある程度読める部分も少なくはない……というのも正直なところなのです。
 特に(詳しくは述べませんが)ラストの対決のシーケンスは、これも一種の運命と言っても、やはりちょっと……という印象は否めないのではありますまいか。

 しかしその良きにつけ悪しきにつけ予定調和的部分を、本作は作中で微妙な捻りを加えることで、うまく中和しているのもまた事実。特に、美形主人公にはあるまじき輝之丞の(嫌みにならない程度の)短慮ぶりや、ライバル兼先輩である主水の意外な面倒くささなど、クスリとくる部分でそれがあるのは大きいと感じます。

 また、終盤のある展開も、ここで主人公をそういう目に遭わすか!? という内容で、これはちょっと驚かされました。


 このように粗削りな部分は目につくものの、なかなかに魅力的な時代伝奇ものである本作。残された謎も少なくないことを考えれば、輝之丞たちの再びの冒険を見てみたい……という気持ちにもなるのであります。


『黄金の剣士 島原異聞』(近藤五郎 白泉社招き猫文庫) Amazon
黄金の剣士 島原異聞 (招き猫文庫)

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