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2016.02.18

鈴木英治『義元謀殺』下巻(その一) 精緻に積み上げられた陰謀の果てに

 謎の一団の凶行により、血に染まる駿府城下。今川家の目付・深瀬勘左衛門は、ついに謎の一団の本拠に近づく。敵味方に死者が続出する中、義元は厳重な警戒の下、花見を強行。多賀宗十郎もその警備に当たるが、敵の真の狙いは意外なところにあった。そしてついに今川と織田の戦が始まる……

 今川家と織田家の決戦が迫る中、織田側の起死回生の策として送り込まれた、今川義元暗殺を狙う一団。その陰謀に巻き込まれた義元の馬廻・多賀宗十郎をはじめ、今川方・織田方、敵味方様々な視点から描かれる歴史ミステリの下巻であります。

 ある晩、駿府城下で起きた凄惨な事件。一夜にして旗本頭の皆殺しにされ、屋敷が廃墟と化したこの事件を皮切りに、駿府では次々と犠牲者が発生、数多くの者が命を落とすこととなります。
 その凶行の下手人は、かつて義元の命で謀殺された山口家の一党。復讐のため、そして織田家仕官のため、彼らは織田家の忍びの協力の下、ある計画のために暗躍していたのでありました。

 山口家謀殺に関わった宗十郎もまた、彼らに狙われたものの、謎の密告者の警告により襲撃を事前に察知した彼は、今川家随一の腕で敵を撃退。
 一方、宗十郎の幼なじみで恋人の兄でもある敏腕目付・深瀬勘左衛門も、執念の捜査から、山口党に一歩一歩近づいていくのですが……


 という上巻に続き、いよいよクライマックスとなる下巻。果たして山口党の、織田家の計画とは何なのか、宗十郎たちは陰謀を未然に防ぐことができるのか。そして何よりも、桶狭間の戦と、この陰謀は関わってくるのか……
 数々の謎が解き明かされていく中、さらに多くの者たちが命を落とし、そして物語は運命の刻に向かい、突き進んでいくこととなります。

 が、困ってしまうのは、これ以上内容に触れようがないことであります。何しろ、誰が死んで誰が生き残るかはもちろんのこと、いつ何が起こるかも、一つ語れば、この精緻に積み上げられた物語全てが崩れかねないのですから……

 そんなわけでいささか隔靴掻痒のきらいはありますが、具体的な内容に踏み込まずに紹介すれば、とにかくまず言えるのは、上巻でこちらが抱いた期待は全く裏切られることなく、最後の最後まで全く気を緩めることもできぬまま、物語は一つの大団円を迎えるということであります。

 上巻の時点で、そしてそれ以降も、物語に散りばめられた数々の謎の、その一つ一つは何となく解けたように思えるものの、それが物語全体の中でどのような意味を持つかはわからぬまま展開していく物語。
 さらに物語が宗十郎や勘左衛門だけでなく、目まぐるしく視点を切り替えていくことで、無数の情報が錯綜し、一種神の視点を持つはずの我々読者も――いやそれだからこそ、完全に術中にはめられてしまうのであります。


 そしてそれだけでなく……以降、思わず長くなってしまいましたので、次回に続きます。


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