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2016.03.09

小前亮『真田十勇士 2 決起、真田幸村』空白期間に舞う勇士たち

 猿飛佐助の誕生と上田城の合戦から語り起こされた小前版真田十勇士の第2巻であります。第1巻から――関ヶ原の戦から十余年が過ぎ、真田幸村は九度山に流刑となっている間も忍びとして活動を続けてきた佐助。豊臣家と徳川家の決戦が迫る中、佐助と勇士たちの新たな冒険が始まります。

 戸田白雲斎に見出され、忍びとして真田家に仕えることとなった少年・佐助。上田城の合戦で初陣を飾った佐助は数々の出会いと別れを経た末に、九度山に流刑となる幸村の忍びとして、行動を共にする道を選びます。

 しかし、その十余年後に佐助のほかに九度山の幸村の下に仕えるのは、鉄砲の名人の望月六郎、通称「白六郎」と、放浪の末に九度山に住み着いた三好一族の末裔の荒法師・三好清海のみ。
 白六郎と共に幸村に仕えてきた剣術の達人の「黒六郎」こと海野六郎は、任務の最中に海に消えて行方不明であり、かつて真田家に雇われて佐助と共に戦った霧隠才蔵は、雇われ忍びとして徳川方に雇われた状態であります。

 そして清海の弟の伊佐と、大谷吉継の家臣であった由利鎌之介は、清海とはぐれた今も反徳川方の義賊として各地で暴れ回る最中。海賊の根津甚八は人員物資の輸送で真田家を助け、弓術と体術の達人の穴山小助は主たる真田信之の下に仕え、九度山の猟師を名乗る十蔵は平和に暮らし……

 つまり、『真田十勇士』と題しつつも、本作が始まった時点では、勇士たちは各地に散らばり、未だ互いに出会わぬ者たちすら存在する状態なのです。

 しかし、こうした一種のチームものにおいては、メンバーが集まるまでの過程もまた、時にその過程こそが醍醐味であることは、言うまでもありません。
 本作の前半においては、十勇士の半数近くが九度山に集結することになりますが、それぞれが全く別の想いを抱き、別の道を歩んでいた者たちが、奇しき運命によって一人一人参じるのは、やはり実に盛り上がります。

 そして後半は、集結した勇士たちが共通のミッション――孤島に眠るという海賊の宝探しに、徳川方の忍びからの幸村警護に挑むという展開で、こちらも一人一芸の持ち主が、それぞれの技を活かして活躍する様が、なかなかに痛快であります。

 尤も、十名という数は、決して少ないものではありません。それほど大部というわけでもない本作において、個々のメンバーに割ける分量も、決して多いものではありません。
 しかしそれでも本作は、その「らしい」言動から、勇士たち一人一人のキャラクターを立てて見せ、時にその描かれざる過去すらも感じさせてみせるのが、本作の巧みさでありましょう。

 特に本作の要所要所に登場する霧隠才蔵は、元々が寡黙な男という設定ゆえ、なかなかその素顔を見せぬキャラクターなのですが、終盤に佐助との対峙の中で見せたちょっとした揺れの中に、彼がこれまで背負ってきたものを垣間見せてくれるあたりが、実にいいのです。

 尤も佐助については、年齢の割には良くも悪くも変わっていないな……と思わされる点もなくはないのですが、彼の場合はそれが持ち味ということかもしれません。
(それよりも、彼と仄かな想いを寄せ合う真田家の侍女・かえでの年齢が気になったりもするのですが……)


 真田幸村にとっては一種の空白期間ゆえ、物語として色々と難しい部分はあったかと思いますが、そこに十勇士というピースを当てはめることにより、綺麗に埋め合わせてみせたという印象の本作。

 ラストではついに十勇士が集結、幸村が大坂入城と、いよいよ次巻決戦であります。


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真田十勇士2 決起、真田幸村


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