『或夜の奇妙な出来事 変』から 異なる作風、異なる怪異の3編
発売から二月経ってからの紹介で恐縮ですが、少年画報社の女性向けコンビニホラーコミック『或夜の奇妙な出来事 変』を紹介いたしましょう。タイトルは全く異なりますが、内容的には昨年夏に発売された『妖怪奇聞 異譚』の続編とも言うべき一冊であります。
読み切りのホラー短編が収録された本書、時代ものメインということは全くありませんが、『妖怪奇聞 異譚』と同様、メインどころと言うべき2作が明治頃を舞台とした作品ということで、私としても注目していたところです。
ここではその2作ともう1作品、時代ホラーものを紹介しましょう。
『ななし譚』(永尾まる)
帰ってきた『ななし奇聞』、今回はタイトルに「ななし」の語が含まれ、作中にもちゃんと七篠先生の名前も登場(それだけでなくあの宿屋の名も……)する新作であります。
都会から離れた辺鄙な山村を訪れた七篠先生、崖から落ちて怪我をしたところを、人の良さそうな夫婦とその息子である青年に助けられるのですが、実は息子には秘密が……という趣向。
お話の自体はすぐに先が読めるところではありますが、背景となっている習俗が何とも薄気味悪く(実際にあったものだと記憶しております)、しかしそれに頼らざるを得なかった人々の悲劇が伝わってきます。
やりきれない物語ではありますが、例によって特に何をするわけでもなく(今回はちょっと危なかったとはいえ)飄々と傍観者的な立場を取る七篠先生の存在感が、苦みを少し和らげていと言うべきかもしれません。
ただ、登場人物の表情は、どうなのかな、こういう時にこういう顔をするのかなあ……というところもあり、この作者にしても難しい題材なのかな、とは感じたところではあります。
『雪見る酒』(桐村海丸)
どこかとぼけた自然体の人々を多く描く作者にしては珍しいように感じる不気味な作品であります。
雪が降り続ける中、人気のない山中の屋敷に迷い込んだ娘が、その中で悠然と雪見酒をする朧たけた美女と出会って……
という本作、物語は淡々と進み、実は結末も明確には描かれず、ただ娘の言葉によってある運命が示されるのみなのですが、これがなかなかにぞうっとさせます。
こうした構成は、結末でドバッとグロ怪異が飛び出す本書の収録作の多くとは異なるところではありますが、如何にも作者らしく、そして個人的には好ましい趣向であります。
『物見の文士 邪龍はいざなう』(晏芸嘉三)
ペンネームを変えた作者による『物見の文士』シリーズの最新作は、実に68ページとかなりの読み応え。どこか浮き世離れした怪奇小説家、実は「見える」人である夜都木周平先生が、今回も怪事件に巻き込まれることとなります。
長雨が続く中、ふらりと散歩に出かけた夜都木先生。不思議な蛇に導かれるように郊外の湖畔の集落を訪れた先生は、その蛇が見えると口走ったばかりに捕らえられ、龍神の生贄にされる羽目になってしまいます。
厳重に縛られ、湖に放り込まれるのを末ばかりの先生ですが、その前に不思議な美青年が現れて――
と、お話的には古風なシチュエーションではあるのですが、巻き込まれるのが昼行灯の先生という時点で、いい意味で緊張感がないのがなかなか楽しい。
謎の美青年の存在も、ある意味定番とはいえ捻りが効いておりますし、普段先生に口やかましく接する書生(?)の少年の設定にも驚かされました。
(タイトルの邪龍がUMA的なデザインなのも、個人的には異物感があって好きです)
ページ数故か、エピローグにそれなりの分量が裂かれており、その中で先生のふとした言葉の端から、存外な人の良さがうかがえる結末もいい。
絵的には個人的には粗さを感じるところはあるのですが、やはり楽しい作品であることは間違いありません。
というわけで、長短取り混ぜて3作品を取り上げさせていただきましたが、どれもホラーと銘打ちつつも、それぞれ全く異なる作風の作品で、楽しませていただきました。こうした時代ホラーも楽しめる媒体として、続刊も楽しみにしております(その時はタイトルが変わらなければよいのですが……)
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