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2016.04.02

森野きこり『明治瓦斯燈妖夢抄 あかねや八雲』第4巻 明かされる謎、ヘルンが求めた物語

 怪談を蒐集する外国人拝み屋の自称「小泉八雲」と、霊感体質の巡査・一宮が様々な怪異に出くわす本作もいよいよ佳境。前巻で一宮がついに己のトラウマと決別した一方で、この巻では八雲の側に大きな動きが生じることとなります。そう、「小泉八雲」とは何者かという本作の最大の謎がついに……

 己の実家で、過去と対峙し、克服した一宮の前に現れた紳士。洋行していた一宮の叔父の友人である彼が名乗るその名はヘルン、そして小泉八雲――そう、彼こそが真の八雲だったのであります。
(以下、ややこしいので本作の八雲は八雲と、真の八雲はヘルンと呼びます)

 しかしそれでは本作の八雲は何者なのか? 物語が始まった時から――あるいはヘルンを恩師と慕う九十九少佐が八雲を紛い物と呼んだ時から――誰もが感じていたその疑問は、ここで八雲自身の口から、ほとんどあっさりと語られることになります。

 その正体とは……さすがにここで述べることは躊躇われますが、さすがにこれは予想できなかった! と仰天させられるのと同時に、どこか納得させられるものであった、と言うことは許されるでしょう。
 そして、これまでの彼の行動を思い返すとき、そこから受ける印象が、大きく変わってくるということも……

 これまで本作の物語が、史実でヘルンが来日する以前の時間軸であることに散々疑問を呈してきたところですが、なるほど、この設定であれば納得できる……というより、この設定であればヘルンが来日する以前でなければならない、と自分の不明を恥じた、というのは余談でありますが。


 さて、こうして明かされた八雲の行動の真の理由と、その背後に蟠るヘルンの黒い意志。そのヘルンがいま来日したのは、何者かに憑かれ、変わり果てた一宮の叔父のかつての婚約者の女性を救うため。そしてヘルンの行動により、確かに女性は救われたのですが……

 八雲を通じて「物語」を――この「現実」の中に生まれた怪異という「物語」を蒐集してきたヘルン。
 しかしそれは果たして正しい行為なのか。「現実」のあるべき姿を歪め、その持つ意味を変えるものではないのか――我々が抱くそんな疑問を、一宮は代弁し、一つの答えを出すことになります。

 八雲と時に対峙しながらも、己を変え、彼を――表面的にはごくわずかながらも――変えた一宮。彼の姿は、どこまでもヘルンを信奉し、その言葉に憑かれたかのような九十九とは対照的であり……そしておそらくこの物語の先に待っているのは、そんな一宮と九十九の対峙を通じた、八雲とヘルンの対峙ではありますまいか。

 本作も次の巻でいよいよ完結とのこと、果たして「物語」の物語を紡いできた本作がたどり着くのは何処なのか……心して待ちたいと思うのです。


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