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2016.04.01

野田サトル『ゴールデンカムイ』第6巻 殺人ホテルと宿場町の戦争と

 北の大地を舞台に繰り広げられる黄金争奪戦を描く本作も快調に巻を重ねて第6巻。敵味方の勢力もほぼ出揃い、ひとまずの目的地も決まった今、物語はクライマックスへ一直線――とはまだまだいかず、思わぬ最凶脱獄囚との死闘が、そしてマカロニウェスタンばりの大乱戦が描かれることになります。

 アシリパの父の友人であるキロランケの、のっぺらぼうこそが死んだはずのアシリパの父だという言葉から、新たな局面を迎えることとなった謎の囚人・のっぺらぼうが秘匿したとされるアイヌの黄金を巡る争奪戦。
 真実を確かめるため、のっぺらぼうが収監された網走監獄に向かうこととなった杉元・アシリパ・白石・キロランケの四人ですが、途中立ち寄った札幌で、とんでもない事態が待ち受けていたのです。。

 彼らが宿泊した「札幌世界ホテル」の妖艶な女将。実は彼女……いや彼こそは刺青脱獄囚の一人、しかもある目的のためにホテルを改造し、目を付けた宿泊客を惨殺している殺人鬼だったのであります。
 それだけでも大変なところに、同じ宿に土方の腹心ともいうべき精力絶倫の元柔道王・不敗の牛山が宿泊、しかも女将に大欲情。さらに女将側も牛山の体を(別の意味で)狙うことに。

 そんな火薬庫の上に腰掛けたような状態とも知らずに牛山と出会った杉元とアシリパは、互いの正体を知らずに意気投合。唯一牛山の正体を知る白石は、先に女将に捕らわれの身にと、もう人間関係が最高に入り組んだ状況でついに(文字通りの)大爆発が……

 いやはや、前の巻に続き、行った先で変態殺人鬼と出くわすという展開はどうなのかなあと思わなくもありませんが、まあそれも刺青人皮を背負う凶悪犯を追っていればこそ、と解すべきでしょうか。
 と、余計なことを考える間もなくホテルを舞台に繰り広げられるスリリングかつ抱腹絶倒ものの乱戦・混戦(なぜドリフ! いや、あのシチュエーションはそれ以外ないですが)。個性の固まりのような面子が、それぞれのキャラクター性を短い間に存分に発揮してみせる様からは、本作の人気の一端というものが見えてくるようにすら感じさせられます。


 一方、杉元一行から離れて巻の後半で描かれるのは、土方・永倉コンビが茨戸の宿場町で繰り広げる「用心棒」ばりのハードなバイオレンス。
 茨戸の支配権を巡り、日泥一家と久寿田一家が警察を巻き込んでにらみ合いを続ける中に飄然と現れた老人――いや生き残りの強者二人は、破落戸たちを容赦なく叩き潰しては己の値を釣り上げていくのですが……

 実は彼らの狙いはこの地にあるという刺青人皮。さらに同様の狙いで現れた元・第七師団の凄腕スナイパー・尾形も加わり、緊張感が高まりに高まったクライマックスでは一大銃撃戦が繰り広げられるのですからたまりません。

 これまで要所要所でその凄みを見せてきた土方ですが、今回は戦士としてだけでなく、幕末の「戦争」を生き抜いた指揮官としての凄みを遺憾なく発揮してくれるのが嬉しいところ。そこに、どちらかと言えば抑え役的なムードだった永倉もついに大噴火(と思えば、まさかの数少ないギャグパートまで)!

 これまで個対個の戦いがほとんどであった本作においては比較的珍しい集団対集団の戦いに、大いに興奮させていただきました。
 そしてこうした展開を目にすると、やはり「戦争」から帰ってきたばかりの杉元と土方が全面対決する日が、いよいよ楽しみになるではありませんか。


 様々な勢力の思惑が入り乱れる展開となってきたため、主人公コンビの出番が奪われがちなのが少々残念なところではありますが、しかしこの混沌ぶりは伝奇ものの最大の醍醐味。まだまだこの極上の味を楽しませていただけそうで何よりです。
(味といえば、グルメ展開が少な目になっていたのは……これはこれでよろしいかと思います)


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