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2016.04.28

野田サトル『ゴールデンカムイ』第7巻 不死の怪物とどこかで見たような男たちと

 マンガ大賞2016を受賞、単行本2ヶ月連続刊行と、いまノリにノっている『ゴールデンカムイ』の第7巻であります。いつ果てるともなく続くアイヌの黄金を巡る刺青人皮争奪戦ですが、この巻では久々に杉元一味が出ずっぱり。思わぬ事件の連鎖が、杉元たちを新たなる戦いと刺青に導くこととなります。

 札幌での殺人ホテルでのドタバタバトルを終え、旅を続ける杉元一行。途中、苫小牧に立ち寄った彼らの前に現れたのは、よく当たると評判の女占い師・インカラマッ。杉元に近づく素振りを見せる彼女にアシリパがやきもきするのにこちらもニヤニヤ……
 というのはさておき、ここで彼女の力で一山当てようと企んだ白石が苫小牧競馬に突撃。そしてこの競馬場で密かに行われていたキロランケが八百長の騎手と間違えられたことで、またもや騒動が引き起こされることになります。

 そして苫小牧を飛び出した杉本たちの次なる目的地は、アシリパのフチの姉の花嫁衣装を手に入れたアメリカ人牧場経営者ダンのもと。そこで衣装を買い戻すのと引き替えに、牧場の馬を次々と襲う「モンスター」――巨大な赤毛の羆を対峙することになった杉元たちは、しかし思わぬ相手の力に、荒野の一軒家に逃げ込むことになります。

 そしてその一軒家の先客が若山輝一郎 と仲沢達弥という、どこかで聞いたような名前と見たことあるようなビジュアルのカッ……男たち。彼らととも羆を迎え撃つことになった杉元たちですが、敵は羆だけではなく――


 杉元一味のみならず、第七師団と土方一党が鎬を削るこの刺青人皮争奪戦。彼らが皆、揃いも揃って個性的な上に、彼らの展開する争奪戦がまた面白いだけに、最近は彼ら敵となる勢力の視点で描かれるエピソードも少なくありませんでした。

 それはそれで面白いのですが、やはり主人公たちに思う存分活躍してほしい……と思っていたところ、冒頭に述べたとおり、この巻では最初から最後まで杉元一味のみが大暴れ。
 待ってましたと言いたいところですが、物語は競馬に花嫁衣装の奪還に羆退治、さらには色々な意味で危険な男たちの登場と二転三転、一体この作品はなんのお話でしたか? と言いたくなるような状態に――

 しかしそれがまた実に面白いから困る……いや困らない。一つ一つのシチュエーションそのものの面白さはもちろんのこと、そこでキャラクターたちが起こす行動が物語をどんどん加速させ、ややこしくも楽しくて仕方ない方向に転がっていくのですから。
 そして、一見脇道にそれまくっているかのように見えた物語が、終盤に来て、実は本筋にきっちりと繋がっていた、という展開もたまらないのです。


 もちろん、冷静にみればやはり話はとっちらかっていますし、熊との対決も本作では既に珍しくないという印象であります。ゲストキャラの有名人もじりも、面白くはありますが、巫山戯すぎという印象は否めません。
 しかしそうした点すらもねじ伏せて、上で述べたように楽しさへと繋げてしまうだけのパワーが、本作にはあります。そしてその混沌ぶりが、逆に魅力にすら感じられるのであります。そしてこの混沌ぶりに振り回されるのも、作品をリアルタイムで楽しんでいるものの特権なのでしょう。

 まだまだ先が見えないこの物語、次の巻で収録されるエピソードでは、またとんでもない方向に物語が展開しているようなのですが……それもまた楽しみとなりまs。もうここまで来たら、勢いのままにどこまでも突っ走っていっていただきたいと思うのです。もちろんついて行きますから。


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