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2016.05.14

くせつきこ『かみがたり 女陰陽師と房総の青鬼』第2巻 彼女が旅する真の理由

 「神騙り」と称して金と引き替えに相手の望みを叶える胡散臭い美女陰陽師・志摩と、かつて房総で暴れ回った最強の鬼の片割れである青鬼・アオの凸凹コンビが活躍する退魔アクションの快作の続巻であります。ひたすら脳天気な志摩の隠された素顔と目的が、ついに明らかになることに……

 最強の双鬼の一人として人々を恐怖のどん底に叩き込みながらも、相棒であった赤鬼に裏切られ、人間に封印されたアオ。
 復讐のために赤鬼を探すアオは、しかし目下のところは志摩に角を取られ、使役されているという屈辱的な状態であります。

 これ幸いとアオをこき使う志摩は、行く先々で出会う「隠(おに)」――形を持たず、人の負の念に取り憑いて災いを為す魔物たちを退治しては礼金を巻き上げようとするのですが……一見、金儲けだけが目的に見えた彼女の前に一人の男が現れたことから、物語は大きく動き出します。

 狐を使役し、冷静に冷酷に隠を狩るその隻眼の男の名は夜白。なんと志摩の兄弟子であります。
 陰陽術の師匠に拾われ、幼い頃から共に育ってきた夜白と志摩。幼い頃に起きたある事件が原因で笑顔を失った志摩を、師と夜白は、父のように兄のように育てるのですが……やがて彼らを悲しい運命が見舞うことになります。

 がめつく享楽的でありながら、どこかお人好しで頼ってきた相手を見捨てられない志摩と、隠に憑かれた者はもはや打つ手なしと、いかなる相手であろうとも非情に葬ってきた夜白。
 同門ながら全く正反対の道を行く二人、しかも師は既に故人とくれば、これは兄弟子が裏切ったというのがパターンですが、本作は、そんなこちらの浅い予想をあっさりとひっくり返してくれます。

 二人の師に何が起こったのか。幼い志摩が心を閉ざした事件とは何か。何故その彼女が今では正反対の性格となったのか。そして彼女が「神騙り」となった理由とは――
 夜白の登場により芽生えた疑問の数々を、過去の物語を絡めて巧みに解き明かし、そして最終的に志摩が旅する真の理由に収束させてみせるというストーリーテリングの妙にはただただ感心させられた次第です。

 何よりも、憎まれ口を叩きながらもお互いを兄妹のように想い合う志摩と夜白が微笑ましく、志摩の考証的にはちょっと……な衣装にもきっちりと、それも泣かせる理由付けがされているのも実にいい。
 一見アバウトなようでいて、しっかりと小技が効いた描写と物語を展開する、本作ならではの展開であります。


 さて、志摩の目的が明らかになったのに対し、初めから目的が明らかなのはアオの方。この巻の後半では、赤鬼に裏切られた彼を封印したという高僧が登場するのですが……そこからの物語も、こちらの予想もしない形で展開していくこととなります。

 そしてついに出現した赤鬼と対峙したアオと志摩の選択とは……こちらについては期待を裏切らない展開となるのが嬉しいところ。
 共に大きな欠落を味わった二人が、共通の敵を前にして改めて互いを必要とし、互いの力になるという(もちろん、相変わらず仲は最悪なのですが)展開からは、ある意味ここからが本編とすら感じさせられるのです。


 残念ながら、本作は先日連載完結し、次の巻が最終巻となるとのこと。
 それはそれでもちろん非常に寂しいことではありますが……しかし、きっちりと志摩の、アオの、このコンビの物語に決着をつけてくれるであろうと信じているところであります。

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