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2016.05.07

戸土野正内郎『どらくま』第3巻 源四郎が選ぶ第三の道!

 金が全ての守銭奴・源四郎と、彼とは腐れ縁の凄腕忍び・九喪――飄々と己の道行く二人の冒険を描く本作も、いよいよ物語の核心に入ることになります。源四郎の実家である真田家を狙う徳川家の攻撃はいよいよ激化、豊臣家亡き後の世界の安寧を賭けた戦いに、二人は巻き込まれていくことになります。

 旅の途中、奇怪な敵に襲われる根津のくノ一・桜を救ったことをきっかけに、真田家と徳川家の暗闘に巻き込まれた源四郎と九喪。
 自分の育ての親であり、誰よりも苦手とする相手である叔父・信之に捕まった源四郎は、やむなく真田家を守るための戦いに加わることになります(源四郎が困るのを見るのが好きな九喪は野次馬的に参加)。

 信之がかつて豊臣方と繋がっていた証拠となる書状を守ることとなった源四郎ですが、真田忍びの一部の離反もあったところに、まさしく超人的力を発揮する忍び、軒猿十王が一人・蠅叩きの前に大苦戦。九喪までもが深手を負わされ、捕らえられた状況で、源四郎の打つ手は……


 と、かなり絶望的な場面から始まるこの第3巻ですが、ここで源四郎が呼んだ助っ人が、第1巻で活躍した剛力の武人・大獄丸というのが、実に少年漫画的で燃える展開。
 捕らえられた九喪が命尽きる前に救い出すことはできるのか? 強大な敵に一致協力して戦う男たち、というシチュエーションは、やはり最高に盛り上がります。

 しかしたとえ九喪を救い、一度の戦闘に勝ったとしても、徳川による真田包囲網はあまりに強大。忍びの世界においても、蠅叩きのほかにも、京からやって来た得体の知れぬ美少女忍びに、徳川で忍びと言えば……な「正重」と、いずれも一癖もふた癖もありそうな面々が登場し、いよいよ戦いはスケールアップするばかりであります。

 その一方で、九喪を含めた当代の忍び、戦国以降の忍びに対して、一世代前の、戦場を日常としてきた忍びたちの影が見え隠れするのもまた実にいいのです。

 時はあたかも戦国から泰平の世への過渡期、本作で描かれるのは、いわばその間に生じた歪みを巡る戦いであります。
 徳川の支配が固まった泰平の世――それは窮屈ではあるものの、少なくとも戦により人の命が消費されていくことはなくなります。しかし、戦国乱世の中でこそ生き延び、輝ける者たちもまた、存在します。それが忍びたちであり、そして大名でいえば真田家なのです。

 そして源四郎が(強く拒否しながらも)属するのはその真田家。商人として無駄な流血を、戦を激しく嫌悪する彼は、果たして泰平を望むのか、家を生かすために戦乱を望むのか……
 そんな選択を――言い換えれば時代の歪みの精算を――強いられることとなった源四郎の選ぶ道は何か? この巻のラストにおいて、信之を前に彼が切る最高に熱く、そして泣かせる啖呵は、まさに彼の選んだ道の宣言にほかなりません。

 そしてどの道よりも険しい道を行くのは、彼一人ではありません。「どらくま」……三途の川の渡し賃で、己の命を彼に預ける者もいるのですから。

 これから彼らが臨むのは、天下を相手にした大勝負。それは智と智の応酬のこともあれば、武と武の激突のこともありましょう。しかしこの二人がいれば――
 そう信じることができる、そしてそんな二人の活躍が楽しみで仕方ない……本作はそんな作品となってきました。


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