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2016.07.15

『戦国武将列伝』2016年8月号(後編) そして新たな世界、新たな時代へ

 『戦国武将列伝』誌掲載作品の紹介、これで正真正銘、最後の第三回であります。

『下剋嬢』(倉島圭)
 何とも感想の書きにくいショートギャグもここで一区切り。数々の戦国武将に近づき、その運命を狂わせた……というよりペースを乱してきたOL・ゆいが自ら命を絶った!?
 というフリから始まる今回は、最終回というある意味唯一無二の機会を存分に活かして、これまでにもまして危険球(と自打球)の連続という印象です。

 しかし、秀吉から家康まで登場して、戦国時代も終わりに来てしまった本作。掲載誌を変えて続くようですが、果たしてどうするのか……あ、戦国という縛りがなくなって、いよいよ餌食になる男たちに不自由しなくなるのですね(タイトルは変えなくてはですが)


『戦国自衛隊』(森秀樹&半村良)
 巨岩「海賊岩」の上に陣を築いた「戦国自衛隊」と、現代の武装を手中に収めた信長との決戦第二ラウンド……の前に、またも乱入者登場。
 命懸け、いや命崖を登って戦国自衛隊に奇襲を仕掛けてきたのは、この時代の日本にはいるはずのない巨躯と体力の持ち主。いや、信長の近くには一人おりました。海を越えて連れてこられた「彼」が――
(しかしトンボ・クンテという本名が、なんというか本作らしい)

 その「彼」に対し、差別は未来でもなくならないものの、しかしその気になれば大統領にもなれる、と熱く語ることで、その心を溶かす伊庭は、もう立派に一軍の将と呼んで構いますまい。
 そして冒頭のインパクトに食われた感もありますが、現代兵器による攻撃と地形を利用した反撃と、それぞれ現代人と戦国人の立場が入れ替わったかのような攻防を繰り広げる両軍。その結末は……まだまだ先になりそうです。


『孔雀王 戦国転生』(荻野真)
 上洛し、天下取りに一歩先んじたかと思われた信長の前に突如として立ちはだかった朝北陸の敵。黄金の魔力に狂い、奇怪なムカデ人間と化した浅井久政は倒したものの、なおも奇怪な黄金に操られた敵との戦いは続きます。

 というわけで今回は信長による朝倉攻めが描かれることとなりますが、行軍中、忽然と姿を消した信長に襲いかかるのが方位神、それも黄「金」の名を冠した存在という趣向は、初期の孔雀王を彷彿とさせるものがあって楽しめます。
 そして孔雀の前に信長の危機に駆けつけたのはなんと……というのも面白く、これもかつての孔雀王で、神に代わる者、神を殺す者として様々な勢力が孔雀王争奪戦を繰り広げていたことを思い出されるのも興味深いところであります。

 それにしても、休刊号とはいえ(もちろん移籍先は決まっているのですが)ほとんど通常営業だった本作、さすがというべきでしょうか……


『無常草紙』(しりあがり寿)
 敵国に攻められ命を落としながらも、魂は城に留まり、自らの国を見守り続けた領主。時の流れの果てに彼が見たものは……
 というわけで、掉尾を飾るのはやはりこの作品。毎回様々な趣向を凝らし、どこか不思議ですっとぼけた、そして時にほろ苦く、時に可笑しく、時に暖かい様々な物語を描いてきたショートコミックシリーズであります。

 死んだ後も地上に留まり、静かにこの世の行く末を見届ける男というのは、いかにも本作らしいキャラクターですが、その行き着く先には我々現代の人間が……というのは、作品全体の結末として、実に美しく、そして納得であります。
 無常であっても無情ではない世界を描き続けてきた本作らしい見事な最終回でした。


 というわけで、全作紹介させていただきましたが、これまで何年もの間、この雑誌でしか読めないような個性的でパワフルな作品を楽しませていただいてきただけに、やはり寂しさは否めません。
 休刊後の掲載作品の去就についてはこちらのとおりですが、移籍作品は移籍先での活躍を心からお祈り申し上げるとともに、終了作品はこれまで楽しませてくれて本当にありがとうございますと、心から申しあげる次第です。


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