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2016.07.14

『戦国武将列伝』2016年8月号(中編) 様々に語られる「武将」たちの姿

 休刊を迎えることとなった『戦国武将列伝』誌、最後の8月号掲載の全作品紹介のその二であります。

『バイラリン 真田幸村伝』(かわのいちろう)
 後藤又兵衛も壮絶な最期を遂げ、大坂方で戦える者もあとわずか。その中で、己の生き様を、己の舞いを貫こうという幸村の、最後の輝きが描かれる最終回。

 本作の幸村の宿敵たる家康は、己を新たな神と呼び、それに相応しい異様な気配を漂わせる一種の怪物として描かれてきました。これに対するに、幸村は佐助らくちなわ衆をはじめとする残り少ない全ての力を集中、敵陣を一点突破せんとするのですが――

 ここで描かれるのは、あまりに有名な大坂夏の陣での真田の赤備えの突撃。それ自体はこれまで幾度となく描かれてきた題材ですが、しかしあたかも幸村を頭とした一匹の龍のような赤備えの姿は、作者の真骨頂ともいうべきスピーディーなアクション描写が冴えに冴え、これまでにない姿を見せてくれたと感じます。
(個人ではなく集団で、このようなアクション描写が見られるとは!)

 幸村の最期の舞いが神話とならんとした男を打ち砕き、そして自身は伝説として残るという結末も美しく、いささか終盤は駆け足の印象もあったものの、まずは最後まで描くべきを描いた……そんな印象があります。


『戦国機甲伝クニトリ』(あさりよしとお)
 今回描かれるのは信長や藤吉郎らによる「武将」談義。会話を中心に描かれるそれは、合戦に比べればいささか地味に見えなくもありませんが(といっても本作の合戦は重量感重視のためそこまで派手ではありませんが)、しかしその内容はなかなかに興味深い。

 本作における「武将」とは、戦闘用人型機械――いわば巨大ロボット。
 当然ながら史実には存在しないその存在は、作中の世界においては理屈抜きの、所与の存在であるかと思いましたが……しかし、いかにも作者らしいというべきか、今回はその「武将」の存在の意味、理由、そしてその存在を支えてきたモノを、一種理詰めで描き出します。

 ここで描き出されるのは、一種の架空技術史だけでなく、それを歴史と社会体制の中に再配置してみせる視点。さらにそこに、信長や藤吉郎、家康それぞれの想いが絡むことで、その後に彼らが歩む歴史が浮かび上がるのもまた面白い。

 正直に申し上げて、これまで本作がロボットものである必然性をほとんど感じなかったのですが、こういう仕掛けがあったとは、と今更ながらに感じ入った次第です。
 ……が、やはりもう少し早く描いて欲しかったな、とは思います。


『鬼切丸伝』(楠桂)
 百地丹波により、その身に怨敵必殺の鬼の秘術を刻み込まれたくノ一・蓮華と、鬼切丸の少年の物語の後編であります。

 己が死した時、その身から鬼を生み出すという悍ましき秘術を背負った蓮華に対し、彼女を斬るのではなく、その生を見届けようとする少年。記憶を失った蓮華と、彼女に「髭丸」と呼ばれる少年は、二人寄り添って暮らすことになります。

 そこで少年の中に、初めて人間らしい恋慕の情が生まれるのも、それに少年が戸惑うのも、お約束と言えば言えるのですが、しかしこれまで少年が歩んできた長きに渡る生を思えば、その重みには粛然とさせられる同時に、少しでも二人の幸せが長く続くことを祈らざるをえないのですが……
 しかし、本作はそんな想いを、これでもかと言わんばかりに無残に打ち砕いていくのであります。

 「髭丸」から鬼切丸の少年に戻った少年の前で、鬼よりも残忍無惨な己の所業を悔いることもなく、平然と振る舞う信長の姿を通じて描き出されるのは、人でも鬼でもない、その両者の業を煮詰めたかのような「武将」の姿――
 これこそが、本作が戦国を舞台として描かれてきた意味であったか、と大いに唸らされた次第であります。連載は雑誌を移して続きますが、まずは見事な一区切りと言うべきではないでしょうか。


 次回でラストです。


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