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2016.07.31

最近の時代漫画 『悲恋の太刀』『戦国新撰組』『変身忍者嵐Χ』『ゆやばな』

 今回は普段と少しだけ趣を変えて、7月に発売された雑誌に掲載されている時代漫画の中から、気になったものを幾つか取り上げていきましょう。先日『戦国武将列伝』誌が惜しくも休刊しましたが、新たに創刊された雑誌もあり、まだまだ時代漫画の世界は元気であります。

 その新創刊されたのが、「コミック斬」。掲載作品のうち半分近くが再録ではありますが、なかなかフレッシュな作品も収録されており期待の一冊です。

 そしてその中でも決して見逃せないのが森田信吾&上田秀人の『悲恋の太刀』。そう、先日新装版が刊行されたばかりの上田秀人の『織江緋之介見参』シリーズの第一弾が、『明楽と孫蔵』など剣豪アクションの名手によって漫画化されるというのですから、これは期待するなという方が無理でしょう。

 その第1回は、原作の第1章をほぼカバー。吉原に飄然と現れ、吉原一の太夫を望んで慶長大判を出し、取り籠もりの侍を鮮やかに斬ってみせた謎の青年剣士・織江緋之介の登場を、さまで多くはないページ数の中で、巧みに描いております。

 正直なところ画の方は最近の作者のもので、往年の絵を期待すると少々苦しいのですが、しかしこちらの期待に大いに応えてくれるのは、森田節とも言うべきその台詞回し。
「白刃火花散らすさ中を足捌きだけで避し――…!! 血煙土煙に動じず涼しい眼であの若侍 重心ずらさず喧嘩衆の壁……抜けた!!」
もちろん原作にはないこの台詞を見ただけで、ああ、森田信吾が帰ってきた! と嬉しくなってしまうのであります。


 さて、「月刊サンデーGX」8月号では、先月から連載が始まった朝日曼耀&富沢義彦『戦国新撰組』の第2話が登場です。
 わけのわからぬまま、幕末の京から戦国時代の桶狭間に放り出されてしまった新撰組隊士たち。怪物のような屈強の相手に苦戦し、囚われてしまった土方、島田、三浦啓之助を待っていたのは、彼らのリーダー格である木下藤吉郎と蜂須賀小六による「尋問」で……

 と、今回展開されるのは、尋問に名を借りた土方歳三と蜂須賀小六の激突。まさしく野武士そのものである相手と、喧嘩最強の土方のなんでもありの激闘を描きつつも、啓之助だけが現状に気付いている事実がさらりと描かれ、静と動の入り混じった展開が印象に残ります。
 が、正直に申し上げれば、いかに生き死にの経験値では遙か上とはいえ、新撰組側が押されっぱなしなのは、新撰組ファンとしてはいささか不満があります(特に土方など、こういう場面にうってつけなキャラだけに……)

 しかしこれまで登場していなかった近藤をはじめとするいわば本隊もいよいよ活動開始、次回には全面衝突が見られるのではないでしょうか。数百年を閲する間に洗練された剣術の冴えを期待したいところです。


 そしてもはや老舗とも言うべき「コミック乱」9月号では、これも前号から連載開始のにわのまこと『変身忍者嵐Χ』が絶好調であります。

 前回、血車党の化身忍者ハンザキと対決し、辛うじて秀忠とタツマキを救った謎の青年ハヤテが意識を取り戻した時、目の前にいたのはタツマキの美しい娘・カスミ。一方、血車党幹部・骨餓身丸は、ハヤテの正体を、一党を裏切った化身忍者の生みの親・風の鬼十と睨み、再びハヤテに対してハンザキを送り込むのですが……

 カスミ、骨餓身丸、鬼十とお馴染みのキャラクターが次々登場する今回(特にカスミと骨餓身丸は、それぞれにいかにも作者らしいデザインで実にいい)、ハヤテの記憶もほぼ回復し、ぐっと本編に踏み込んできた印象なのですが――今回の見所はなんといっても実に十ページ近くを費やして描かれる「変身」シーンであります。
 変身ヒーローにとって変身シーンは大きな見せ場の一つですが、それを丹念に、そしてそれでいてスピーディーに描いているのは作者ならでは(そしてその中で「化身」と「変身」の違いを語ってみせるのも心憎い)。

 そしてラストページで高らかに名乗りをあげる嵐! これが見たかった!


 そして同誌からはもう一作、たみ&富沢義彦の『ゆやばな』が特別読切で登場。このコンビで湯屋を舞台に、三人娘を通じて江戸の文芸サロンを題材にした作品というと、どうしても『さんばか』が浮かびますが、本作はそれよりも7年ほど後の時代、三人娘も別人のようで、一種のリブート的な印象。
 頁数が少ないのが残念ですが、一種エッセイ漫画的な展開でいくと面白いのかも……と感じたところです。


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