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2016.07.09

辻真先『未来S高校航時部レポート 新撰組EZOで戦う!』 これで見納め? 反則級の大騒動!

 つい先頃もコンレボで健在ぶりをアピールした辻真先の学園青春SF時代ノベルの完結編が刊行されました。これまで時空を股にかけて大活躍してきた未来S高校航時部の面々もついに卒業、最後の舞台は幕末。動乱と混沌の時代で、驚くべき冒険が繰り広げられることとなります。

 時は二十二世紀、故あってタイムマシンを託され、航時部を結成した五人の高校生と一人の教師――(元)男装の美少女・黎、歴史マニアの男の娘・真琴、お調子者の超能力坊主・越人、クールな古武術の達人・凜音、クールな天才少年・学、そして美女だけど色々残念な蓮橘先生。
 これまで享保年間の江戸、そして大坂の陣まっただ中の大坂城と、二度にわたりタイムトラベルし、歴史改変を目論むタイムテロリストの陰謀を退けてきた航時部ですが、元々は彼らも高校生、それぞれに進路を決めて卒業間近となりました。

 そんな彼らに命じられたのは、お偉いさんの娘だという美少女・アザミを伴っての、新撰組が活躍する幕末の京へのタイムトラベル。しかし学と蓮橘を残し、アザミと他の部員たちは忽然とタイムリーパーから消失してしまうのでした。
 彼女たちが出現したのは、目的の時代よりも数年先、新撰組の生き残りたちが死闘を繰り広げる宮古湾海戦――旧幕府軍と新政府軍の戦いのただ中だったのです。

 急ぎ当時のタイムパトロールである勝海舟の助力を求めた学と蓮橘ですが、しかし知らされたのは、黎たちが出現したのは、実はこの世界の過去ではなかったという事実。
 そう、彼女たちが飛んだ先は、いわゆるパラレルワールド――そこでは永倉、原田らが土方歳三と行動を共にして戦い続ける世界、そして土方がタイムパトロールを務める世界だったのであります!


 というわけで、前作では歴史改変ギリギリの展開という、タイムトラベルものとしては危険球だったのですが、今回は初めから別の世界だから歴史が変わっていてもOK! という潔い(?)展開。
 しかしこの世界でもタイムテロリストの跳梁は続き(さりげなくとんでもない人物が……)、今回も航時部の面々と、タイムパトロール――すなわち土方は、どこからどんな手段で襲い来るかわからない敵に挑むことになります。

 そしてそんな中で主役級の活躍をみせるのは、もちろん土方。なぜ彼がタイムパトロールに、というのは置いておくとして(ちゃんと語られます)、今回語られる、タイムパトロールの――タイムパトロールだからこその――ある非情な宿命を背負って戦う姿は、なるほど彼なればこそでしょう。

 そして土方といえばもちろん剣ですが、そのアクションがまた燃える! こんな技アリか? いや、彼ならばOK、と言いたくなってしまう本作ならではの「秘剣」は、そのアクションとの絡め方の巧みさも相まって、本作の見どころの一つであります。

 さらにまた、そんな土方が胸中に抱える屈託――ある人物の死にまつわる謎解きも、あっさり目ではありますが、しかしその真相の切なさも相まって、強く印象に残るのです。


 後半にはまたも時代を移しての戦いが展開、ちょっと意外な(?)キャラクターが、相当に意外な歴史上の人物と出会って活躍するなど、盛りだくさんの内容なのですが……しかし完成度という点では、ちょっと、いや相当苦しいという印象があります。

 最終作なのに航時部員の出番・活躍に大きなムラがある――実は学と蓮橘がほとんど活躍していない――というのはさておき、本作のキーパーソンである謎の美少女・アザミ――ほとんど反則に近い彼女が、後半に行くにつれて存在感を失っていく、というよりなぜ存在しているのかわからなくなっていくというのはかなりの問題。

 ある意味彼女の存在が本作を支配することを思えば、その彼女が迷走していくにつれ、物語が(こういう表現は使いたくはないのですが)破綻していくのは、必然なのかもしれません。
 その先に待っている結末も、もう反則中の反則で、最終作だからといってアリなのかしら……という想いは否めません。

 もっとも、その一方で、もう最後だから全部やってしまえ! とばかりにつめ込まれたラストの展開の野放図さ(カタストロフの快感?)は、これはこれで全くもって本シリーズらしい、と納得できてしまうのも事実。
 やはり上で述べた不満も全て、作者の掌の上で踊らされているだけなのかしらん、とも思わされてしまうのは、やはりこの作者ならではのマジックなのかもしれません。


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