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2016.08.30

野田サトル『ゴールデンカムイ』第8巻 超弩級の変態が導く三派大混戦

 まだまだ続くアイヌの黄金争奪戦、それぞれに独自の動きを見せてきた杉元・土方・鶴見の三派ですが、ここにきてついにその全ての動きが交錯することになります。それも、思いもよらぬ超弩級の変態の存在をきっかけにして……

 アメリカ人牧場主ダンの依頼がきっかけの怪物熊との死闘の最中、図らずも新たな囚人の刺青を手にした杉元一味。さらにダンから、不気味な人皮で装丁された本とともに、夕張に刺青の人皮があったことを教えられます。
 しかし彼らの動きに先んじていたのは鶴見中尉。珍しい刺青をした炭鉱夫の死体が盗まれた事件から周囲を探索していた彼は、墓場から死体を盗もうとした怪しい人影を追跡、その先にあったのは一軒の剥製所の主・江戸貝弥作は一見温厚そうな青年だったのですが……

 この作品でこう来れば、当然(?)次に来るのは変態の出現。そう、その名から察せられるとおり、この江戸貝青年こそは人の死骸を加工して様々な冒涜的なオブジェや服を製作、さらに自分の母をも剥製として、その剥製と脳内で会話する大変態だったのです。
 そうなればお次江戸貝と鶴見の死闘……と思いきや、ここでとんでもない変化球。変態は変態を知ると言うべきか、なるほど鶴見といえばこれがあった、という思いもよらぬ手段で「江戸貝くぅぅん!」と鶴見は江戸貝を籠絡し、彼にある依頼を行うのであります。

 しかしその依頼を受けた江戸貝の監視を行っていた鶴見の部下・月島らを突如襲う、かつての鶴見一派、今は土方に協力するスナイパー・尾形。逃げる江戸貝と守る月島、追う尾形に、この騒動を知った杉元と白石が加わり、夕張炭鉱を舞台に、三派の大混戦が展開するのですが……


 いやはや、これまでも数々の変態が登場してきた本作ですが、さすがに驚いた……というよりドン引きした今回。そもそも、蝦夷地にこれだけの変態がいても、みな刺青囚人だっただけにそれなりに納得がいくのですが、さすがに野良でエド・ゲインが住み着いているのはいかがなものか。
 さらには江戸貝くぅぅんご満悦のファションショーまで来ては、何と評すべきか……(人皮太鼓に人骨撥とか妙なところで元ネタ再現しているのもポイントが高い)

 しかしそのやり過ぎなキャラクターの存在が、意外な形で物語と絡み、盛り上げていくのが本作の本作たる所以。モノがモノだけにそうそうできるとは思わなかった手段が、このキャラクターの存在でもって可能になり、刺青人皮争奪戦が一気に複雑化するのには、ただただ感心させられます。

 さらにクライマックスで三派が夕張炭鉱内で繰り広げる追跡戦は、やはり本作らしいドタバタぶりではありますが、舞台にあるものをフルに使った活劇はやはり無条件に楽しく、そして終盤のクライシスから、まさかのあのキャラクターが! という結末の意外性にも痺れるのです。
 そしてそこから、およそ繋がりそうになかった二派が繋がる可能性が……とくれば、やはり本作の縦横無尽の面白さには唸るほかありません。

 その一方で、アシリパのコタンに留まっていた阿仁マタギ・谷垣も、哀しい過去の物語を経て「命の使い道」を見出し、アシリパのために旅立つ(そしてその道連れはあの女狐インカラマッ)という痺れる展開。
 独自の思惑を持つキャラクターたちが、それぞれの動きの末に一本の流れにまとまっていくというダイナミズムは、伝奇ものの醍醐味の一つですが、ここにあるのはまさにそれなのであります。

 そしてその流れの先にあるのは、本作の発端である謎の「のっぺらぼう」ですが……しかしそこに辿り着くまでにも、まだまだ一波瀾も二波瀾もあることでしょう。
 それはもちろん、まだまだ楽しみが尽きない、ということとイコールであるのは言うまでもありません。


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