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2016.08.12

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第5話「剣鬼、殺無生」

 迴靈笛を奪った殺無生に対し、鬼鳥が一度退いたことを訝しむ仲間たち。被害を最小限とするため、自分が策を練る一晩、殺無生への手出しを禁じる鬼鳥だが、殤不患は一人殺無生の前に姿を現す。酒を酌み交わしながら互いを探りあう殤不患と殺無生。お互いが相容れぬとわかった時、二人の剣が奔る……

 前回、狩雲霄・捲殘雲・刑亥の三人を相手に大立ち回りを演じた殺無生。一見優勢にもかかわらずあっさりと引いた鬼鳥ですがこの先待ち受ける三つの関門を抜けるのに、狩雲霄と刑亥の力が必要なのですからこれは無理もない。が、宿での作戦会議の席上、それに異を唱えたのは捲殘雲。その二人が駄目だとしても自分がいる、先ほど立ち合った感触からすれば、殺無生に勝てると言い張るのですが、これはどう考えても、名を上げようと粋がった若造の死亡フラグであります。
 その捲殘雲に舐めた口を聞かれながらも彼を気遣う殤不患ですが、しかし兄貴分の狩雲霄も匙を投げ、刑亥に至っては、彼を喜々として人間爆弾にしようとする始末。鬼鳥が、策を練る一晩の間は手を出すなと釘を刺したことで、その場はひとまず収まるのですが、こんな時、大抵その禁を破って一人出て行く者がいるわけです。

 そして他の客が恐れ逃げ去ってしまった飯店で一人酒を呑む殺無生の前に現れた影――「来るとすれば貴様だと思っていた」と言わしめたその人物こそ、殤不患。殺無生が先の立ち合いでわざと手を抜き、捲殘雲を油断させたことを咎める殤不患ですが、しかし殺無生がそれを意に介するはずもありません。むしろ、自分のことを恐れず、鳴鳳決殺の渾名のことを知りもしない殤不患に興味を持った殺無生に対し、殤不患は西幽から来たと答えるのでした。

 この西幽とは本作の舞台である東離の国と遠く隔てられた国――それも単なる距離的なものだけでなく、かつて人と魔が繰り広げた大戦の後、呪いをかけられて行き来を封じられた国とのこと。東西の国を隔て、踏破したものはいないと言われる呪われし地・鬼歿之地を殤不患は二本の足で踏破してきたというのですから、話半分にしてもさしもの殺無生も驚き呆れた……というところでしょう。

 それはさておき、今の旅が終わるまで鬼鳥への復讐は待ってくれ、旅に必要な迴靈笛を返してくれと理を以って説く殤不患ですが、殺無生にとって迴靈笛は逃げ足の早い鬼鳥を鬼鳥を引き寄せるための餌なのですから返すはずもありません。次いで、そんな殺伐としていいのか、人として人を斬ることに悩みはないのか、と情に訴える殤不患ですが、悩むより前に相手を斬る剣鬼にとっては、これこそ笑止であります。
 そしてその剣鬼の興味は――すなわち殺気は――殤不患にも向かいます。席についてからずっと、貴様を殺すことばかり考えていたと剣呑極まりないことを言い出す殺無生ですが……そう、それは裏を返せば、そんな彼をして、剣を抜かせないだけのものを殤不患が持っていたからにほかなりません。

 殺無生が脳内で殤不患にあの手この手で斬りかかるたびに、それを受け止め、反撃してみせる殤不患。達人同士が、相対しただけで相手の力量を見抜き、剣を抜かずに想念の内で静かなる死闘を繰り広げるというのは剣豪ものの定番ですが、今回描かれたのはまさにそれであります。

 しかし互いに一歩も引かなければ、やはり後は激しくぶつかり合うのみ――久々登場の念白とともに殺無生がその剣を抜き、殤不患が応じた一瞬の交錯のうちに、互いの身から血しぶきが上がった! と思いきや、そこに響いたのは鬼鳥の呑気な声。互いに斬り、斬られたと思ったのは鬼鳥の術中、椅子と机を斬っていたのでした。そしてさらに驚くべきことを口にする鬼鳥。迴靈笛は返さずともよい、自分たちの旅に同行してくれば、闇の迷宮を抜けた後に首を差し出そう、と……

 なるほど、殺無生が鬼鳥をおびき出すために笛を持つというのであれば、鬼鳥が動けば殺無生も笛を持ってついてくる。目的を果たした後に首を差し出すかは、これはちょっとにわかには信じがたいところですが、実は根が素直なのか、殺無生は二つ返事で同行を決めるのでした。森羅枯骨とやらの城を冷やかしに行ってやるのも面白い、などと相手にとっては迷惑この上ない言葉とともに。
 その森羅枯骨こと蔑天骸も、ようやく鬼鳥たちの動きを悟り、迎え撃つ様子ですが……


 というわけで、武侠イズム、というより古龍イズム溢れるある意味一本気な剣鬼である殺無生と、ベクトルは違えど本質的には最も近いものを感じさせる殤不患の対峙を、濃厚な味付けで見せてくれた今回。アクションらしいアクションはごくわずかだったのですが、大満足であります。
 これまで一歩引き気味だった殤不患の過去の一端や、鬼鳥にとっても彼が不可欠な存在であるらしきことも語られ、いよいよ物語は佳境に入った、という印象であります。


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