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2016.08.02

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第4話「迴靈笛のゆくえ」

 因縁があるらしい鬼鳥(凜雪鴉)を前に激昂する刑亥。しかし刑亥は奪われたのが天刑劍と知り、一転して協力を申し出るのだった。一方、闇の迷宮を超えるために必要な迴靈笛の持ち主・廉耆は、鬼鳥たちと合流の途中、鬼鳥を付け狙う殺無生に倒され、迴靈笛も奪われてしまうのだった。

 前回の引きより、捲殘雲と丹翡に死霊を任せて先に急ぐ鬼鳥・殤不患・狩雲霄たちですが、なおも死霊の数は増すばかり。ここで鬼鳥が口を尖らせれば、たちまち周囲に吹き出すのは死霊を焼く炎、しかも鬼鳥はその炎を周囲にまで広がらせると、早く出てこないと森に火が回ると煽りまくるのでした。

 と――四方八方から飛んでくる色鮮やかな反物。ああっ、武侠ドラマっぽい!(即物的な感想) そしてそれに身を預けるように現れたのは、巨大な角を戴く美女・刑亥です。
 しかし登場したときから刑亥が怒り心頭なのは、森に火をつけられたからではなく、鬼鳥そのものの存在。何やらこの二人、訳ありのようですが……しかし、その刑亥も、奪われたのが天刑劍と聞くや、あっさりと態度を変えて鬼鳥への助力を申し出るのでした。

 と、このくだり、
「怒り狂っていた刑亥が一瞬で変心するほど天刑劍が恐るべき存在であること」
「そうでもなければ刑亥が決して許さないほどのことが二人の過去にあったこと」
「それでも刑亥はあっさりと宗旨替え(したように見せることが)できること」
と、やり取りの中で二人の性格と関係性を一瞬で見せているのには大いに唸らされました。いやはや、この辺りは脚本の巧みさというべきでしょう。

 さて、三つの関門のうち二つまでを突破する手段が手に入ったところで残る一つは迴靈笛。それを持つのは鬼鳥にとっては師の一人である廉耆先生。道具に魔力を込めるのに長け、さらに剣を取っても天下屈指の遣い手である老人。しかしビジュアル的にもえらく威勢のいい襟や肩の辺り、枯れたものは感じさせない、意気軒昂たる人物であります。
 が、待ち合わせの寺に向かう廉耆に現れたのは、見るからに凶剣の遣い手という印象の鋭い目の男・殺無生。鬼鳥に激しい怨みを持ち(またか!)、鬼鳥の行方を捜す殺無生は、鬼鳥に縁のあると睨んだ者を次々と襲い、屠っていたのでした。

 殺してしまってはわかるものもわからないと思いますが、しかしこの辺りを何となく納得させてしまう理屈といい、何よりもその言動といい、この殺無生からは猛烈な古龍イズムが感じられます。……そしてその殺無生と立ち会った廉耆が一瞬で倒されてしまう展開もまた。そして廉耆の懐を探った殺無生が見つけたのは、鬼鳥からの手紙と迴靈笛――

 そして待ち合わせの寺を目前とした鬼鳥たち一行の耳に響く笛の音を奏でていたのはもちろん殺無生。鬼鳥を待っていた殺無生に対し、まず挑んだのは狩雲霄であります。
 天空高く矢を射てから、相手の懐に飛び込んでその動きをコントロールし、落ちてきた矢で相手を貫く――以前、獵魅らに対して披露した技ですが、相手は達人だけあって、そう簡単にはコントロールすることはできません……というより、この攻防が本当に素晴らしかった!

 ドニー・イェンなどのアクション映画で、ほとんどゼロ距離の密着したから相手に打撃を当てる-それを避けて当て返すというシーケンスを観ることがありますが、今回はまさにそれを彷彿とさせるもの。しかもそれを演じるのは人間ではなく、人形! 派手な合成や豪快なアクションがまず目につく本作ですが、ある意味地味な、しかし非常にかっちりした殺陣を見せてもらえるとは……
(しかもこのシーケンス、仕掛けるのが弓使いの方というのも楽しい)

 しかし必殺の一矢は逆用されてあわや狩雲霄を貫きかけ、兄貴分の危機に割って入った捲殘雲もあっさりと吹き飛ばされたところに、刑亥までもが参戦して三対一となりますが――しかし全く動じない殺無生を前に、鬼鳥は笛を取られていることの不利を挙げて一旦引くのでした(というか、本人たちは忘れていたようですが、狩雲霄も刑亥も、どちらが欠けても先に進めないわけで……)


 と、今回はツッコミ役程度の出番だった殤不患ですが、丹翡が殺無生戦に加わろうとした時に「あいつの前で剣は抜くな」と制止するナイスフォロー。まず間違いなく、殺無生は自分に剣を向けた相手には女でも容赦しないから、だと思いますが、この辺りは江湖の往来が長い彼ならではのものを感じさせます。
 正直なところ、これまで少々キャラの薄さが気になっていた本作ですが、今回はどのキャラもちょっとした台詞からその人となりや背景事情が浮かんできて、繰り返しになりますが、脚本の妙に感心した次第です。


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