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2016.09.17

吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第2巻 バディであり弱点であり戦う理由である者

 突然現れた鬼に母を、弟妹たちを殺され、残る妹・禰豆子を鬼に変えられた少年・竈門炭治郎が、鬼を討ち、妹を人に戻すために戦う時代アクションの第2巻であります。鬼を討つ者たち・鬼殺隊に加わるための最終選別を乗り越えた炭治郎の初任務、そしてその先に待つ思わぬ出会いとは……

 鬼殺隊で後継を育てる男・鱗滝の下で、無茶とも言える厳しい特訓を続けてきた炭治郎。彼にとっては兄姉弟子に当たる錆兎と真菰の助言により己の持つ力を極限まで出しきった炭治郎は、ついに鬼殺隊の隊員となる最終試練の場に向かうことになります。
 そこで幾多の候補者たちを――錆兎と真菰も含めて――屠ってきた異形の鬼と退治することとなった炭治郎は……

 という引きで第1巻から続きますが、ここは炭治郎があっさりと強敵を粉砕、彼を含めて四人(五人?)が新たな隊員として鬼殺隊に迎えられることになります。
 そして鱗滝のもとに帰った炭治郎を待っていたのは、眠りから覚めた禰豆子。いまだ鬼と人の間の不安定な状態を彷徨う彼女を連れ、炭治郎は鬼殺隊として初の任務を与えられることとなります。

 毎夜少女が消える街で炭治郎を待つ新たな鬼。意外な能力を持つこの鬼との戦いを終え、次の任務に向かう途中、覚えのある「匂い」を嗅いだ炭治郎は、そこであまりにも意外な相手に出会うことになります。
 それは炭治郎の家族を殺し、禰豆子を鬼と変えた鬼・鬼舞辻無惨――

 この巻の表紙に炭治郎とともに登場している洋装の男こそがその無惨。炭治郎の仇にして、人を鬼に変える力を持つ最古の鬼であります。
 そして、その無惨によって鬼に変えられた男を救おうとする炭治郎の前に現れたのはさらに意外な人物で……


 というわけで、序章とも言うべき内容であり比較的緩やかな展開であった第1巻に対し、本編に入ったということか、一気に物語が加速した印象のあるこの第2巻。
 最終試練の結末、鬼殺隊としての初陣、そして早くも宿敵さらには第三勢力との遭遇と、全く出し惜しみすることなく矢継ぎ早に繰り出してくるのには、この先大丈夫なのかしら……と思わなくもありませんが、しかしこのスピード感が本作の魅力の一つでしょう。

 そしてそんな第2巻の中でも最大のイベントが、ラスボス候補である鬼舞辻無惨との出会いであることは言うまでもありません。

 本作に登場する鬼たちが、いずれも人間の姿を醜く歪めたかのような異形であったのに対し、見た目は全く人間と変わらず、むしろ端正とも言える容姿の持ち主である無惨。
 その容姿にふさわしい落ち着いた物腰と、そして(おそらくは)人間の妻子とともに登場する意外性にもかかわらず、次の瞬間、炭治郎から逃れるために、たまたま近くにいた男を鬼に変えるというのは、まさしく鬼の所業であります。

 そしてそこからさらに新たな、それも物語の根幹に関わる人物との出会いが……という展開にも驚かされます。
 しかし、これだけ矢継ぎ早にイベントが展開し、新たなキャラクターが登場しても炭治郎の存在感がしっかりとあるのは、彼の傍らに禰豆子の存在があるためでしょう。

 炭治郎にとってはバディであり、弱点であり、戦う理由である禰豆子。
 そんな複雑な彼女の存在はまぎれもなく本作の最大の独自性であり、そしてその彼女の存在があるからこそ、炭治郎が物語の流れに押し流されることがない、物語の起伏に埋もれてしまうことがないのだと……そう感じます。

 そしてもう一つ、炭治郎が鬼を、人を等しく悼むことができるのは――そしてそこから生じるバトルものでありつつも本作にどこか漂う寂寥感は――やはり鬼と人の中間に在る禰豆子を知るからなのではないでしょうか。


 無惨の側にも、炭治郎――正確には、彼がつけている耳飾りの持ち主――と因縁があるらしきことが語られ、まだまだ物語の全貌は見えませんが、この先の展開がいよいよ気になる本作。
 この先もこのスピード感と独自性を持ち続けてくれることを期待しています。


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