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2016.09.29

『コミック乱ツインズ』2016年10月号 新連載&移籍ラッシュで充実の誌面

 発売から半月が経った今頃で恐縮ですが、今回は「コミック乱ツインズ」誌最新号の紹介をしたいと思います。この数ヶ月同誌では新連載ラッシュ、特に今月からは休刊となった「戦国武将列伝」誌移籍組も加わり、相当の充実した内容となっていますが、その中から特に気になる作品を取りあげます。

『勘定吟味役異聞 破斬』(かどたひろし&上田秀人)
 先月から連載スタートとなった本作、タイトルでおわかりの方も多いと思いますが、上田秀人の文庫書き下ろし時代劇シリーズの漫画化であります。

 時は六代将軍家宣のいわゆる正徳の治の頃、新井白石により勘定吟味役に抜擢された青年・水城聡四郎が、幕府の財政の闇に挑む……という内容は原作に忠実ですが、ビジュアルの方もこちらのイメージどおり。
 初々しい聡四郎に紅のツンデレぶり、白石や荻原重秀の陰険さ、紀伊国屋文左衛門の得体の知れなさ等々、実によい感じです。

 かどたひろしと言えば、同誌の『そば屋幻庵』の――すなわち人情ものの印象がどうしても強かったのですが、剣戟シーンの切れもなかなかで、この先も期待できそうな漫画化であります。


『鬼切丸伝』(楠桂)
 冒頭で触れた「戦国武将列伝」移籍組第一号が本作。悠久の時の中で、唯一鬼を倒せる「鬼切丸」を振るう少年の物語です。

 これまでも平安時代から戦国時代・江戸時代まで、様々な歴史的事件や伝説を題材としてきた本作ですが、再開第一回の今回描かれるのは黒塚――すなわち、安達ヶ原の鬼婆であります。奥州安達ヶ原で旅人を襲っては喰らっていたという鬼婆。しかしその鬼婆も二百年前に高僧の導きで成仏し、今は既に人を喰らう鬼はいなくなったはずなのですが、少年の前に現れたのは……

 不幸な巡り合わせから自らの娘を殺し、赤子の生き肝を奪った後に真実を知り、絶望のあまりに人外の者と化したという鬼婆。その異形の母子像は、酒呑童子に食われた尼僧の胎内から生まれた鬼切丸の少年と、ある意味対照的なものがあります。
 その意味では再開第一話にこのエピソードを配置するのにも納得なのですが、それだけでなく、さらに重く切ないひねりが加わっているのが本作らしいところでしょう。

 ただ、今回の作中年代は927年(「奥州安達ヶ原黒塚縁起」の726年の二百年後)に対し、鬼切丸の少年が誕生したのは995年なので、矛盾が生じているのは残念ですが……


『エイトドッグス 忍法八犬伝』(山口譲司&山田風太郎)
 こちらも原作もの、それも山田風太郎のあの『忍法八犬伝』の漫画化であります。しかも、作画を担当するのがエロティックな作品を得意とする(そして時代ものも少なくない)山口譲司というのは、これはコロンブスの卵な組み合わせでしょう。

 連載第三回の今回は、里見家お取り潰しの陰謀により奪われた八玉奪還のため、一人奔走する犬村角太郎が犬田小文吾のもとを訪れるも彼は乞食稼業が板についていて……というくだりですが、そこに現れるのが、本作では(確か)初登場の村雨姫。
 八玉を奪った八人のくノ一が、いずれも作画者らしい妖艶な美貌なのに対し、村雨姫はあどけなさも残る清楚な姿で、この辺りはさすが、と納得させられます。また、ストーリーをかなり整理して展開をスピーディーにしているのも好印象です。

 時折絵的に粗い部分もあるような気もしますが、いよいよ次回から忍法合戦本格スタートということで期待したいと思います。


 以上、個人的に印象に残った三作品を取り上げましたが、その他の作品でも、武村勇治を作画に迎えた『仕掛人藤枝梅安』や、『ケダマメ』の玉井雪雄の『怨ノ介 Fの佩刀人』が気になるところです。

 前者は長きに渡りさいとう・たかをが漫画化してきた池波正太郎の名作ですが、作画者のバイオレンスフルな画風と、温厚な梅安のキャラクターのギャップが、彼の表裏を象徴しているようで面白い。
 また後者は、自分を陥れた相手を求めて刀剣男子ならぬ刀剣女子を伴に旅する男の復讐行ですが、今回は本作ならではの「刀を振るうこと」「人を斬ること」の意味を、丹念なビジュアルで描き出しているのが強く印象に残ります。

 次号からはやはり「戦国武将列伝」移籍組の重野なおき『政宗さまと景綱くん』がスタート。いよいよ充実する誌面に期待は高まります。


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コミック乱ツインズ 2016年10月号 [雑誌]

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