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2016.09.03

宮川輝『買厄懸場帖 九頭竜 KUZURYU』第2巻 伝奇へと飛躍する物語

 宮川輝による第三の「九頭竜」――『買厄懸場帖九頭竜 KUZURYU』第2巻の登場であります。これまで石ノ森章太郎、さいとう・たかをと錚々たる面々で描かれてきた作品に現代的なアレンジを加えた本作は、この第2巻に入っていよいよ快調、物語はついに一大転機を迎えることとなります。

 旅から旅へ、薬を背負って各地を流れ歩く青年・九頭竜。売薬人である彼の裏の顔は、金で人の厄を買う面倒始末人、「買厄人」であります。
 金さえ積まれれば人を殺めることも躊躇わない九頭竜ですが、しかし彼の真の目的は、己の母を殺した謎の一団を探すこと。その手がかりとなるのは、母の死体が手にしていた九頭の竜の前金物で……

 という基本設定で展開していく本作、第1巻に収録された全6話は、原作の冒頭6話をベースとしたものでしたが、この巻の冒頭4話も、続く第7話から第10話までをベースとしたものとなっています。

 成り上がりを夢見て人を斬ろうとする若者と九頭竜の出会い「唐変木」、故郷を捨て荒みきって帰ってきた男が引き起こす惨劇「血達磨」、孝行な子供のために母を連れ戻そうとした九頭竜が知る真相「龍の髭」――

 冒頭3話は、第1巻と同じく独立した内容のエピソード。冷たく乾いた人情ものとでも申しましょうか、そこでは人と人とが織りなす、どうにもやり切れない重苦しい物語が綴られていくこととなります。
 しかし、そこに良い意味での軽みを感じさせるのは、もちろん本作の九頭竜のキャラクター像によるものでしょう。他の版と異なり、飄々とした美青年といった雰囲気の九頭竜が時折見せる人間味が、一種のスパイスとして、物語の苦味を和らげ――あるいは強めて――いるのです。


 しかし、続く第10話「ぬばたま」(ちなみに、さいとう版はこれが最終話)において、物語は大きく趣を変えることとなります。
 父の薬のために自らを売ろうとする娘と出会った九頭竜。彼が証文を取り返すために訪れた検校の屋敷で見たもの――それは、自らの持つものと同じ九頭の竜の前金物でありました。

 この検校こそはこの世に九つあるという前金物を持つ者の一人にして、九頭竜の養父であった行者の同輩。そして九頭竜の養父こそが、彼の母の仇だという言葉に、激しく九頭竜は動揺することになります。
 そして辛くも検校との戦いに勝ち(ここで本作独自のアレンジが加わっているのが実にいい)、なおも前金物の秘密を追う九頭竜の前に現れたのは、いずれも一癖ありげな四人の男たち。武田家の残党だという男たちもまた、前金物の謎を追っていたのであります。

 そして九頭竜の窮地を救った謎の女が語る、驚くべき秘密とは――ここに至り、物語は一気に飛躍を遂げ、この国の源流にまで遡る伝奇ものへと変貌することになります。

 この辺りの展開もまた、ほぼ原作を踏まえているのですが、しかしこの辺りの大展開ぶりはやはり何度読んでもテンションが上がります。
(ちなみに原作では「ぬばたま」の後に数話、単発エピソードが入るのですが本作ではそれをオミット、スピード感が増してるのが嬉しい)

 そして物語に伝奇性が増すのと比例して、アクションの度合いもグッと増すのですが――本作の場合、そのアクションの完成度が素晴らしい。
 九頭竜の殺陣の特徴とも言える、一対多数のバトル、そして静から動へと一瞬に切り替わるアクションを、ケレン味たっぷりに、描き出す点において、本作はオリジナルに勝るとも劣らぬものを持つ――私はそう感じます。


 そして一気に盛り上がったまま、次巻へと続いていく物語。原作を忠実に踏まえつつも、また新しい魅力を見せる本作がどこに辿り着くのか……まだ結末は少し先のことになるかと思いますが、最後まで見届けたいと思います。


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