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2016.09.19

柴田錬三郎『真田十勇士 三 ああ! 輝け真田六連銭』 殺すためでなく生きるための戦い

 全三巻で復活したNHK人形劇のノベライゼーション版『真田十勇士』も、この第三巻でついに完結。ついに幸村の下に集った十勇士たちが、大坂の陣を舞台に、最後の活躍を見せることとなります。

 運命に導かれるように真田幸村の下に集い、幸村と豊臣家を守って戦ってきた九人の勇士――猿飛佐助・霧隠才蔵・三好清海・高野小天狗・由利鎌之助・呉葉自然坊・筧十蔵・為三・穴山小助。
 既に天下の趨勢はほぼ徳川家康の下に固まった中、それでも豊臣家を何とか存続させるべく、幸村と勇士たちは歴史の陰で戦ってきました。

 しかし、豊臣と徳川の開戦を避けんとする彼らの奮闘むなしく、ついに大坂の陣は勃発。最後の十勇士、幸村の息子・大助を加えてついに全員集結した勇士とともに幸村は九度山を離れ、真田丸に籠もって徳川軍を迎え撃つのですが――

 いささか意外なことに、と申しましょうか、大坂冬の陣は比較的この巻の早い段階で終結することになります。

 言うまでもなく、残るは大坂夏の陣のみですが、しかし十勇士の戦いは、その前にも繰り広げられることとなります。それは、敵を倒す、相手を殺すための戦いではなく、生かすための戦い――
 そう、既に大坂城落城は確実な状況の中、豊臣秀頼を落ち延びさせる、その工作のために、勇士たちは駆けるのです。

 「花のようなる秀頼様を鬼のようなる真田が連れて」と歌われるように、大坂の陣の後、幸村が秀頼を連れて大坂城を脱出し、薩摩に落ち延びたというのは有名な伝説ですが、本作はそれを踏まえつつも、さらにスケールアップ。
 落ち延びる候補地として、薩摩だけでなく、蝦夷地の秘境、さらには山田長政が活躍する暹羅まで……文字通り勇士たちは東奔西走して、新天地を求めるのです。

 この辺りは、とにかく何でも盛り込んでやろうという本作らしい展開ではありますが、しかし、その候補地として薩摩以外が登場するのは、十勇士ものとしてはかなり珍しい(柴錬立川文庫でもやっていない)展開。
 この、戦後を見越して動く十勇士という点は本作の特徴の一つと言ってもよいかもしれません。そこに、これまで幾度も描かれた、敵を殺すことに強いためらいを持つ佐助のキャラクター像を重ねることも。


 そして始まる最後の戦い。ここからの展開は、これまでめまぐるしい展開の多かった本作とは思えないほど(という言い方はいささか失礼ではありますが)、幸村と勇士だけでなく、登場人物の一人ひとりの行く末が、丁寧に掘り下げられ、描かれていくことになります。

 戦いの中に命を擲つ者、生き延びて小さな幸せを掴む者、新たな世界に向かう者……これまでの物語の積み重ねを踏まえて描かれるそれぞれの姿は、ただ圧巻。
 これは少々ネタバレとなりますが、十勇士それぞれの去就が、かなりバラバラなのも面白い。大坂城で討ち死にという(十勇士ものではよくある)パターンがほとんどないのも、豊臣家のためではなく、真田幸村のために集まった勇士たちを描く本作らしいという印象があります。

 そしてその結末は、より血生臭い結末を迎えた(特に佐助の姿はほとんど対極とも言える)柴錬立川文庫と比較すると、より際立って感じられるのです。


 何はともあれ、長きに渡り幻の作品と化していた本作は、ここに復活を遂げました。

 正直なところ、人形劇のノベライゼーションという性質ゆえか、物語の起承転結が激しすぎる(そして同じような展開が繰り返される)点はあります。
 描写の面でも人が鳥や魚に変身したり空を飛んだりと、今の(大人の)目で見ると荒唐無稽に過ぎる面は否めません。

 しかしながらそれは柴錬一流のアイディアの奔流と相まって、得難い野放図さ・豪快さと表裏一体となっているのもまた事実。
 そして何よりも、第一巻の紹介で触れたように、柴錬立川文庫を中心に、様々な柴錬作品のクロスオーバー的性格の強い内容は、柴錬ファンとしては決して見逃せないものがあります。

 今回電子書籍化もされていることを考えれば、本作はこれまでにも増して多くの人々に読み継がれていくことになるのではないでしょうか。
 殺すためだけではなく、生きるために戦った十勇士たちが長い命を得る……それはなかなかに気持ちの良いことであります。


『真田十勇士 三 ああ! 輝け真田六連銭』(柴田錬三郎 集英社文庫) Amazon
真田十勇士 (三) ああ! 輝け真田六連銭 (集英社文庫)


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