« 平谷美樹『貸し物屋お庸 娘店主、想いを秘める』 お庸の成長と彼らの正体と | トップページ | 吉川うたた『鳥啼き魚の目は泪 おくのほそみち秘録』第6巻 そして旅は終わり、旅は続く »

2016.09.27

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第12話「切れざる刃」

 玄鬼宗を撒いて丹翡・捲殘雲と合流した殤不患。あくまでも飄々とした態度の殤不患に苛立ち、「刃無峰」の二つ名をつける捲殘雲だが、その場に現れた玄鬼宗に対し、殤不患はその真の力を発揮する。一方、ついに天刑劍の柄と鍔を手に入れ、鍛劍祠で天刑劍の封印を解いた蔑天骸たちが見たものとは……

 いよいよ残すところあと2回。今回は主人公の一人である殤不患の真の力が明かされることとなります。

 前回あっさり正体を見破られて玄鬼宗に追われる羽目になった殤不患。ようやく玄鬼宗を撒いた彼は、刑亥と狩雲霄から逃れて傷の手当て中の丹翡と捲殘雲を見つけます。お互いの状況を確かめ合う三人ですが、凜雪鴉の策が破れてむしろイイ気分な殤不患に捲殘雲のイライラが爆発。窮地にあっても呑気に笑い、名誉も沽券も気に懸けないくせに厄介事には平気で首を突っ込む……そんな殤不患が気に入らないようです(しかし捲殘雲よ、それこそが「大侠」というものでは……)
 その挙げ句、殤不患に「刃無峰」――「切れない刃」という二つ名をつける捲殘雲ですが、むしろ殤不患はそれが気に入った様子であります。

 と、そこに現れたのは凋命率いる玄鬼宗の皆さん。凋命が殤不患に対して「大根役者」と呼びかけるのは、前回を思い出すと笑ってしまうのですが……それはさておき、武器を手にして戦うものの、やはり精彩を欠く丹翡と捲殘雲。捲殘雲を助けるため、自分の剣を投げつける殤不患ですが、それを手にした捲殘雲が見たものは――なまくらどころか、木の刀を銀色に塗っただけのいわば竹光。だとすれば、これまで玄鬼宗と渡り合い、岩石巨人を破壊した殤不患は……
 かつて殤不患の技を見て、気功は見るべきところがあるが、剣の切れ味は二流と判断した殺無生。しかしそれも道理、殤不患は初めから剣など持っていなかったのですから。全ては彼の気の力、その辺りの木の棒に気を込めるだけで、肉を切り裂き骨を断つどころか、岩をも砕く剛剣となるのであります!

 まさしく刃無峰の技で以て、玄鬼宗を一掃する殤不患。その彼を大根役者と嘲った凋命こそ哀れ、むしろ登場人物全てに真の力を隠してきた殤不患こそは千両役者! 凋命の命をかけた一撃をあっさりと打ち砕いた殤不患は、しかし相手の命を奪ったことには憂い顔を見せます。そう、彼が竹光を差すのは、いかに技を極めようと人を斬るのを当然とせず、己を縛める――のも面倒なので最初から武器を持たぬこととしてためなのですから。
 その辺りの殤不患の想いをどこまで理解したか、捲殘雲は新たな英雄の登場にワクワク顔……のように見えます。

 さて、そんな一幕の一方で、ついに天刑劍が封印されている鍛劍祠に現れた蔑天骸、そして狩雲霄と刑亥。ついに柄と鍔の両方を手にすると、あっさりと封印を解いて天刑劍をその手に収める蔑天骸ですが――その時、不気味な鳴動とともに天刑劍の台座が崩れます。台座の下の空間に潜んでいたのは、巨大な魔物。これこそは天刑劍に倒されたと伝承されていた魔神・妖荼黎――二百年前の戦いの後、唯一魔界に帰還していなかったという妖荼黎は、やはり倒されたのではなく、天刑劍に封印されていたのであります。

 それを知って慌てたのは狩雲霄、さすがに自分の生きる世界が魔神に破壊されては、と蔑天骸に矢を向けるのですが、彼ほどの達人が慌てていたのか、後ろから刑亥の鞭で首を絞められ、天井の梁にぶら下げられる始末。そのまま力を緩めぬ刑亥に抵抗の力も薄れ、偽者とはいえ一個の英雄だった狩雲霄も無惨に絶命することに……
 刑亥の真の目的こそはこの妖荼黎復活、邪魔するのであれば容赦はしないと鞭を向ける彼女に対し、むしろ妖荼黎復活を歓迎する蔑天骸。魔神復活により到来する乱世こそは剣の天下、俺の歩む道に相応しいと、テンプレ通りの世紀末覇者ぶりであります(その割りに、後で妖荼黎を倒せば救世主にもなれるというのが何というか)。

 かくてそれぞれ望みを果たして鍛劍祠を出た二人。と、蔑天骸の前に姿を現したのは、隠れて一部始終を見ていた凜雪鴉であります。蔑天骸から最強の剣たる天刑劍を奪い取り、その心を折ることこそ盗賊の本懐と語っていた凜雪鴉。しかしここに至り彼が知ったのは、真に蔑天骸が恃むのは自分自身の無敵の剣術、天刑劍はあくまでもそれに釣り合う得物に過ぎなかった……という事実でした。
 だとすれば、その蔑天骸の誇りを奪うのは簡単、ただ彼を剣技で以て破ればよい。そう言い放った凜雪鴉の手には、この物語が始まって初めて剣が――


 今まで溜めに溜めてきたものが大爆発した前半の殤不患の大立ち回りと、後半の(ある程度予想はできていたものの)意外な展開で盛り上がった今回。思想的には、凜雪鴉よりも殤不患の方が、蔑天骸を倒すのに相応しいようにも思いますが、さて……


『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』第4巻(BDソフト アニプレックス) Amazon
Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 4(完全生産限定版) [Blu-ray]

関連サイト
 公式サイト

関連記事
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第1話「雨傘の義理」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第2話「襲来! 玄鬼宗」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第3話「夜魔の森の女」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第4話「迴靈笛のゆくえ」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第5話「剣鬼、殺無生」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第6話「七人同舟」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第7話「魔脊山」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第8話「掠風竊塵」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第9話「剣の神髄」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第10話「盗賊の矜恃」
 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第11話「誇り高き命」

|

« 平谷美樹『貸し物屋お庸 娘店主、想いを秘める』 お庸の成長と彼らの正体と | トップページ | 吉川うたた『鳥啼き魚の目は泪 おくのほそみち秘録』第6巻 そして旅は終わり、旅は続く »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/64262825

この記事へのトラックバック一覧です: 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』 第12話「切れざる刃」:

« 平谷美樹『貸し物屋お庸 娘店主、想いを秘める』 お庸の成長と彼らの正体と | トップページ | 吉川うたた『鳥啼き魚の目は泪 おくのほそみち秘録』第6巻 そして旅は終わり、旅は続く »