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2016.11.22

『コミック乱ツインズ』2016年12月号(その二)

 『乱ツインズ』12月号の掲載作品紹介の後半であります。図らずも原作ものが続きます。

『仕掛人 藤枝梅安』(武村勇治&池波正太郎)
 前回は休載のため二ヶ月ぶりの本作は「秋風二人旅」の後編であります。
 大仕事の後にあてもない旅に出た梅安と彦次郎ですが、途中でかつて妻を惨殺した男を見かけ、仇を討つべく逸る彦次郎。しかしとてもそのような凶行を行うようには見えぬ相手の姿に慎重に探りを入れた梅安は、京で出会った白子屋菊右衛門から、思わぬ仕事を受けることに……

 というわけで、因果と因縁が回り回って、彦次郎の妻の仇に仕掛けることとなった梅安と彦次郎。しかし標的は無頼に堕ちたとはいえ剣の達人……というわけでダーティーな相手にはダーティーな策で挑む二人の姿が面白いのですが、やはり印象に残ったのはその後。
 ついに仇を討った彦さんの姿は、この作画者ならではの画という印象で、まだ荒削りな印象もあるものの、作画者独自の色が出てきたのは評価できるところです。

 ちなみにこのエピソード、何度も映像化された上に原作者自身の脚本による舞台化、そしてさいとう・たかをによる漫画化と幾度となくヴィジュアル化されているのですが、そのそれぞれでラストなど微妙に異なる解釈になっているようで、なかなか興味深いところです。
(本作はその辺りをすっぱりと切って、上記の彦さんの姿に繋げているのも面白い)


『エイトドッグス 忍法八犬伝』(山口譲司&山田風太郎)
 前回、半蔵屋敷への小文吾の捨て身の突撃により、「八人の犬士対八人のくノ一」の形でついに始まった忍法(?)合戦も、いよいよ第二番目に突入と言うべきでしょうか。巨犬・八房に導かれた村雨姫が出会ったのは犬坂毛野……今は盗賊団を率いる鋭い美貌の青年であります。

 いわば無頼の極みとも言うべき毛野ですが、村雨姫の純な瞳の前に命を投げ出すことを快諾、いやモブ盗賊の皆さんまでもとんでもない(いや、山風忍法帖は大体においてそうですがビジュアルで見ると本当にとんでもない)手段で協力することに――
 この辺りの描写はこの作画者ならではなのですが、ここから毛野が大暴れ。こんなに強いのならば一気に全員抜きするのでは? と思わされたところで、次回に続きます。


池波正太郎時代劇スペシャル『元禄一刀流』(山本康人)
 池波正太郎の作品を様々な作家が漫画化する好企画、今回は山本康人が忠臣蔵ものの名品を漫画化。ともに堀内源太左衛門の門下であり、熱い絆に結ばれていた赤穂浪士の一人・奥田孫太夫と、最期まで吉良上野介に仕えた清水一学が、悲しい運命に翻弄される姿を描き出します。

 当時の江戸でも名門として知られ、堀部又兵衛も入門していた堀内道場。そこで剣を振るう孫太夫と一学は、親子ほども年は離れながらも、互いに深い敬意を抱き、交流を続ける仲でありました。特に百姓の出ながら上野介に拾われ、名実ともに武士となるために筆舌に尽くしがたい苦労を重ねた一学にとって、孫太夫は理想像そのものだったのです。

 しかし松の廊下の刃傷が二人の運命を一変させることとなります。敵味方に分かれただけでなく、孫太夫が討ち入り前から英雄扱いなのに比して、卑怯者の家臣として道場の仲間からも嘲笑される一学。しかしそれでも一学は、孫太夫に一目会うために道場に通います。そしてついに出会った二人ですが……

 原作ももちろん名作と言うほかないのですが、しかしそれ以上に作画者の筆力に圧倒される今回。落ち着いた老成ぶりと希望に満ちた溌剌さと、対照的ながらもそれぞれに武士として、いや人としての好ましさを体現するような二人が、悲しみを呑んで別れ、そして刀を手に対峙する――
 そこに至るまでの二人の心理描写が胸を打つだけに、クライマックスの対決シーンの凄まじさが、一層哀しくも凄まじく感じられるのです。

 ただ一つ、漫画という形式の場合、原作の師匠の視点からという構成はあまり有効に機能していない印象もある(狂言回し的に見えてしまう)のは少しだけ残念でしたが……


 次号は大島やすいちによる鬼平が掲載というのにも色々な意味で驚かされますが、特別読切として速水螺旋人が登場というのも凄い。この辺りの誰が登場するかわからない作家陣の豊富さも、この雑誌の大きな魅力であります。


『コミック乱ツインズ』2016年12月号(リイド社) Amazon
コミック乱ツインズ 2016年 12月号 [雑誌]


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