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2016.11.04

森野きこり『明治瓦斯燈妖夢抄 あかねや八雲』第5巻 八雲を通じて描かれた「物語」と「現実」

 怪談を蒐集する外国人拝み屋「小泉八雲」を巡る物語もいよいよ結末を迎えることとなります。「八雲」を名乗る彼と、真の「八雲」=ラフカディオ・ヘルンと、二人の八雲の対峙が何をもたらすのか。そして一宮巡査の選択は……(以下、物語の核心に触れますのであらかじめご了承下さい)

 詐欺師まがいの拝み屋を営む不良外人として監視を命じられたことから八雲と縁を持つこととなった一宮巡査。霊感体質であったことから様々な事件に巻き込まれる中、一宮は八雲に友情に似た想いを抱くことになります。
 そんな中、一宮の叔父の友人として来日した曰くありげな外国人・ヘルン。そして彼こそが真の小泉八雲であり、そして八雲の生みの親だったのです。

 幼い頃から様々な神秘譚・怪異譚に惹かれ、蒐集してきたヘルン。その彼がある日手にした古書に記されていた、ほとんど忘れ去られていた物語……ヘルンが名を与えることによって人の姿を取ることとなったその物語こそが「八雲」であり、ヘルンは彼を使って怪談を蒐集していたのであります。

 その真実を知ってもなお、自分の知る八雲こそが真の八雲だと信じ、行動する一宮。そんな二人に対し、ヘルンは自分を師と慕う混血の軍人・九十九少佐を操り、怪異により人々を襲わせると、八雲に濡れ衣を着せるのですが――


 前巻で明かされたそのあまりに意外な内容に驚かされつつも、しかし不思議に違和感を感じなかった「八雲」の正体。
 この巻ではそれを踏まえつつ、最後の物語が展開していくこととなります。

 「現実」と対置される怪異という「物語」を好み蒐集するだけでなく、その「現実」を「物語」を以て操作する……いや、「現実」を自分好みの「物語」へと変貌させんとするヘルン。
 その力は一宮と八雲にも及び、二人の現実は、それぞれにとっての理想の物語へと変貌していくのですが――

 物語の冒頭から、この現実に存在する怪異と対峙してきた一宮と八雲。その果てに待つものは、多くの場合、悲しみに満ちた現実でありました。
 それを物語として昇華することは、確かに一つの救いであるかもしれません。しかし物語とされることでこぼれ落ちるものもある。悲しみに満ちた現実の中にも、小さな光がある。二人の姿は、それを示してきました。

 それが生み出したものは、当然ながら冒頭から意図されていたであろう――そして恥ずかしながら終盤まで私はそれに気がつかなかったのですが――史実とのずれをも巧みに飲み込み、「小泉八雲」の誕生という美しい「現実」に落着したと感じます。

 八雲の正体にまつわる展開の意外さに比べると、終盤の展開はある程度予想はついたのですが、しかしこれもあるべきところに収まったと言うべきでしょう。

 八雲という存在を通じて描かれた「物語」と「現実」……ここに大団円であります。


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