ことだま屋本舗EXステージ『クロボーズ』を観て(聴いて?)きました
本日YOKOHAMA O-SITEで上演された、ことだま屋本舗EXステージ『クロボーズ』を観てきました。いわゆるモーションコミックの声の生アフレコとでも言いましょうか、舞台上のスクリーンに映し出される漫画のコマの前で、出演者が声を当てるというなかなかユニークな舞台であります。
この舞台の原作である『クロボーズ』については以前にもこのブログで紹介いたしましたが、現代の黒人ヘビー級ボクサー・ヤーボが突如戦国時代にタイムスリップ、「弥助」と名乗って織田信長に仕えるという奇想天外な作品であります。
現在も連載中の本作は先日単行本第1巻が刊行されましたが、今回上演されたのはその第1巻に収録された8話+その後の1話分。タイムスリップしたヤーボが信長や秀吉と出会い、そして本能寺の変で……という辺りまでとなります。
さて、この舞台の主役はもちろん「声」ですが、これがヤーボ役をはじめとして出演者が皆はまり役、基本的には皆声優の方で、恥ずかしながら私はこの方面には暗いのですが、しかしやはりプロの力というものに素直に感心しました。
(ただ一人、望月千代女役の平田裕香は声優ではありませんが、こちらも戦隊俳優の経験ありのためか、全く違和感なし)
出演者は基本的に特別な格好(例えば演じるキャラクターの衣装)をしているわけでもなく、舞台上でマイクの前に向かっている状態、これはまことに失礼な表現ながら、一歩間違えるとスクリーンを見るのに邪魔になりかねないのですが、これが全く気にならなくなるのは、なかなか面白いことです。
さて、出演者の中でもやはり前面に出てくるのは弥助役の前田剛と信長役の佐藤拓也ですが、前者は漫画をスラスラと読んでいると比較的流してしまいやすい弥助の感情の振幅を丹念に拾っているのに感心であります(そして周囲と言葉が通じていない序盤と、通じるようになったそれ以降でしゃべり方を変えているというのも面白い)。
また後者は基本的に「格好いい信長さま」というラインに忠実なのですが、作中で歌われる二つの歌をきっちりこなしていて好印象でありました。
しかし個人的に一番印象に残ったのは、実は前田利家でありました。作中では序盤と終盤に登場して弥助に絡むキャラクターで、それほど出番は多くないのですが、しかし弥助、そして秀吉と微妙な距離を取りつつも、しかしそれぞれに好意とも興味ともつかぬものを裏に感じさせるのが実にいい。
この辺りはもちろん原作通りではありますが、しかし声の演技がつくことで、表に見えにくいひねくれ者の人間味がくっきりと浮かび上がるのは嬉しい発見でした。
また、弥助の妹たちと、お市の三人の娘が同じキャストなのは、ドラマ的にうまい配役で……と、色々と感心させられた舞台でした。
ただ時間的には通しで一時間弱で、それで9話分の内容というのは相当に駆け足にも感じられたのも事実ではあります。
とはいえ、この辺りは内容的に原作に忠実にせざるを得ない(仮に映像化された際に補われるであろう部分がない)この舞台の性質を考えれば、ある意味仕方ないと言うべきかもしれませんが――
また、これは厳しいことを言いますが、原作でもかなり細かいコマを大きなスクリーンで映すのは書き込み的に厳しく見えるところもあり(これはもともとそういう扱いのコマなのだから仕方ないと思います)、コマのチョイスなど、そもそものスタイルにはまだ詰めるべきところもあるようにも感じます。
しかし試みとしては非常に面白く魅力的なものであることは事実ですし、ライブだからこその熱気と吸引力があったことはまた間違いない話であります。
ラストの盛り上がりも相当なもので、私が観たのは昼の部だったのですが、これ、夜の部に行ったら続きが観られるのでは……などと思わず考えてしまったほどです。
漫画のメディア化には色々なやり方があるかと思いますが、このような形もあったのか、と感心させられたこの舞台。ぜひまたいずれ……と感じた次第です。
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