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2016.11.07

友野詳『ジャバウォック 真田邪忍帖』 勃発、何でもありの忍者大戦!

 「魔界戦国」が終結してから十年。既に過去の記憶も薄れつつある太平の世に、再び魔界を生み出そうとする者たち――真田十勇士改め十幽鬼が出現した。悪神の力を宿して甦り、千姫が在り処を知る豊臣家の莫大な黄金を狙う彼らの前に立ち塞がるのは、大坂の陣で散ったはずの男――真田大介であった!

 時代小説参入以来、ユニークな作品を次々繰り出してきた友野詳がしばしの時をおいて発表した新作は、超時代伝奇バイオレンスとも言うべき異色作にして痛快作であります。

 大坂の陣によって戦国の世が終結し、徳川幕府によって太平の世が訪れて十年――厳重に警備された本多忠刻の屋敷を、何者かが襲撃する場面から物語は始まります。
 居並ぶ猛者たちを次々と物言わぬ肉塊に変えていく、あたかもミイラ化した猿のような奇怪な襲撃者。佐助と名乗る怪人の狙いは、この屋敷の奥方――かつて豊臣秀頼に嫁した千姫でありました。

 家中の者たちを傷つけぬため、自ら佐助に同行を申し出た千姫。しかしその二人の前に、隻眼の若武者が現れます。佐助の術技をものともせず、その大剣で佐助の首を叩き斬った青年の名は真田大介――かつて大坂城に依って家康を散々に悩ませた真田幸村の子にして、大坂城に散ったと思われていた男であります。

 やはり落ち延びた主君・秀頼と各地を旅していたものの、ある目的を持って、一人千姫の前に現れたという大介。その目的とは、かつて豊臣家が隠し、千姫がその鍵になるという莫大な黄金の封印でありました。
 同行を諾った千姫、そして追ってきた千姫付きのくノ一・あとらとともに旅立つ大介の前に次々と現れるのは、佐助と同じく冥府から悪神を宿して甦った十勇士改め十幽鬼。さらに謎の伊賀者・四貫目も加わり、行く先々を血と闇に染める死闘旅が各地で繰り広げられることに……


 ということで、全編これこちらの好物で構成されたかのような本作。いずれも超絶の力を持つ怪物十勇士が敵という、かの名作伝奇漫画『虚無戦史MIROKU』を思わせる構図だけでも堪えられませんが、その魔戦の中に入り乱れるのは、忍術妖術剣術、果ては怪しげな未来科学と、何でもありの大活劇!

 ジャバウォック――わけのわからぬ化け物というタイトルに相応しい、混沌とした、というごった煮感と、エロも人死にも容赦ない展開は、懐かしの80年代末~90年代前半の伝奇バイオレンスを彷彿とさせるものがあり、そういうもので育ってきた私のような人間には直撃としか言いようがありません。
(そもそも登場する忍者の名前など、わかる人にはニヤニヤできる、スーパー忍者大戦状態で……)


 ただしここで一つ白状すれば、本作の発売前、あらすじ等を目にした時には、複雑な想いがあったのもまた事実であります。
 何しろ、本作のバックグラウンドにあるのは、かつて魔王信長が召還した邪悪な神々により、数々の神魔邪怪の入り乱れる状態となった「魔界戦国」という異形の戦国時代。つまりはファンタジー、つまりはパラレルワールドで、その先に展開される物語も、史実と異なる、(厳しい表現をすれば)無責任なものとなるのではないか……と。

 もちろんそれはそれで面白いものではありますし、否定してよいものでは決してありません。しかしこれだけの材料がありながら、どうにも勿体ない……という気持ちは、一読、見事に背負い投げを食らうことになります。
 詳しいことは述べませんが、ある人物の存在を通じ、本作においてはその世界観、つまり我々の知る史実とは異なる魔界戦国の存在もまた、一つの仕掛け――その史実に至るまでにあったかもしれない世界として機能しているのですから。

 そしてこれはマニアの深読みですが、本作における魔界戦国の存在は、これまで描かれてきた様々な忍者ものをはじめとする戦国伝奇アクションへの、一つのエクスキューズとしても機能しているのではないでしょうか。
 忍法といいつつ、どう考えても超能力や妖術、未来の超科学にしか見えない、懐かしの作品群に登場する秘術の数々。それらをいまこの時代の作品に甦らせつつ、かつそこに本作なりの理屈を付ける……そのための魔界戦国でもあるのではないかと。

 もう一つ、こうして我々の前に甦ってきた懐かしの秘術のオンパレードと、戦国の世から甦ってきた十幽鬼たちの大暴れに、符号を感じてみるというのも、また楽しいことであります。

 繰り返しになりますが、これはこちらの勝手な想像に過ぎません。それでも――そんな妄想に心を遊ばせてみたくなる、そんな作品なのであります。


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ジャバウォック 真田邪忍帖 (Novel 0)

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