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2016.12.30

このブログが選ぶ2016年ベストランキング(文庫書き下ろし編)

 今年はよそで書く機会がなかったので、このブログでやります2016年のベストランキング。2015年10月から2016年9月末発刊の作品について、文庫書き下ろしと単行本それぞれについて、皆様にお勧めしたい6作(シリーズ)を挙げていきたいと思います。まずは文庫書き下ろし時代小説から。

 さすがに一時期に比べるとブームも落ち着いてきたかに思える文庫書き下ろし時代小説ですが、それでもまだまだ毎月大変な点数が刊行されております。
 その中で6作、それもこのブログらしいチョイスというのはなかなか大変なのですが、悩みに悩んだ末の結果は以下の通りであります。

1位『素浪人半四郎百鬼夜行』シリーズ(芝村涼也 講談社文庫)
2位『ヤマユリワラシ 遠野供養絵異聞』(澤見彰 ハヤカワ文庫)
3位『明治剣狼伝伝 西郷暗殺指令』(新美 健 角川春樹事務所時代小説文庫)
4位『鬼の福招き 一鬼夜行』(小松エメル ポプラ文庫ピュアフル)
5位『やっとうの神と新米剣客』(西本雄治 白泉社招き猫文庫)
6位『天正真田戦記 名胡桃事変』(出海まこと メディアワークス文庫)

 悩んだと言いつつも、浪人剣士と様々な妖異との死闘を描く1位だけはすぐに決まったというのが正直なところであります。
 2014年からスタートしたシリーズも、今年発売の第6巻から第二部に突入。「文庫書き下ろし時代小説」的な世界観と妖怪ものの巧みな融合という第一部からの特長はそのまま、終盤に向かうにつれて物語のスケールはガンガン広がり、クライマックスの伝奇的な盛り上がりにはただただ脱帽です。来年早々に刊行の最終巻も楽しみであります。

 2位は非シリーズものではダントツの作品。死後の後生を祈る「現絵」を描く青年武士と孤独な少女の物語が思わぬ方向に広がり、哀しくも力強く美しい物語として結実する本作は、作者の代表作であると言って差し支えないと思います。
 ちなみに本作、SFやミステリのイメージが強いハヤカワ文庫からの刊行というのもなかなか象徴的です。

 3位は西南戦争を舞台に、西郷隆盛を巡って銃と剣が火花を散らす軍事冒険時代小説の快作。
 これが時代小説デビュー作となる作者の筆の勢いと、出し惜しみなしのアイディアの連続に一気に読まされました。

 4位はお馴染み、閻魔面の商人と生意気な小鬼の凸凹コンビの人気シリーズの第二部開幕編。様々な妖にまつわる騒動と、その背後の人と妖の情の交錯をオールスターキャストで送る内容は、まさしく横綱相撲と言ったところでしょうか。ラストシーンの美しさも非常に印象に残ります。

 第1回招き猫文庫時代小説新人賞・大賞を受賞した5位は、熱血青年剣士と幼女姿の神さまという組み合わせも楽しい異色の剣豪青春小説。ファンタジー色の強い、しかし足腰のしっかりした時代小説を多く刊行してきたレーベルらしい快作でした。今後の活躍にも期待したい作者です。

 そして6位は、今年数多く刊行された真田ものから。若き真田幸村が、秀吉の小田原討伐の序章とも言うべき名胡桃事変で活躍する姿を描く本作、この作品ならではのアイディアが満載(何しろ幸村のもう一つの名というのが……)の快作であります。
 が、実は本作、5年前に上巻のみ刊行された『ロクモンセンキ』の続編という変則的スタイルなこともあって、少々勧めにくい作品になってしまったのは残念なところです。


 ちなみに次点としては『燦』シリーズ(あさのあつこ 文春文庫)、『妖怪の子預かります』シリーズ(廣嶋玲子 創元推理文庫)と思います。
 前者はラストのどんでん返しに本当にひっくり返りましたが、とにかく待たされる期間が長かった、という印象が残るのが残念。後者は特に第2巻『うそつきの娘』で作者らしい暗黒絵巻が展開されているのが印象に残ったところです。


 単行本は明日。



『素浪人半四郎百鬼夜行 六 孤闘の寂』(芝村凉也 講談社文庫) Amazon
『ヤマユリワラシ 遠野供養絵異聞』(澤見彰 ハヤカワ文庫JA) Amazon
『明治剣狼伝 西郷暗殺指令』(新美健 角川春樹事務所時代小説文庫) Amazon
『鬼の福招き 一鬼夜行』(小松エメル ポプラ文庫ピュアフル) Amazon
『やっとうの神と新米剣客』(西本雄治 白泉社招き猫文庫) Amazon
『天正真田戦記 名胡桃事変』(出海まこと メディアワークス文庫) Amazon

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