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2016.12.25

真田丸ロスに送る時代小説5選+α

 このブログで取りあげることこそありませんでしたが、私も毎週楽しみにしていた大河ドラマ『真田丸』。先週ついに最終回を迎えてしまったため、真田丸ロス状態の方もいらっしゃるかと思いますが、そんな方のために時代小説・歴史小説のオススメ5選+αを紹介いたします。

 まず取りあげたいのは①『真紅の人 新説・真田戦記』(蒲原二郎)。
 大坂の陣で信繁の下に加わり、真田丸で戦った少年・佐助の目から見た大坂の陣を描いた作品であります。

 本作は物語・キャラクター自体の面白さもさることながら、特筆すべきは作中で描かれた道明寺の戦い(後藤又兵衛の最後)の新解釈が、ドラマの方でも同様の解釈が採用された点でしょう。
(ちなみに主人公、実はドラマでも人気だったあの武将の子であります)


 続いてはドラマでも明確には描かれなかった大坂の陣の「その後」を意外な切り口で描いた②『秀頼、西へ』(岡田秀文)。
 幸村が秀頼を連れて薩摩に逃れたという有名な伝説を題材に、秀頼とともに薩摩に向かう真田大助の逃避行を描く一種の歴史ミステリです。
 歴史小説と同時にミステリの方面でも評価の高い作者だけに、誰も信じられなくなる終盤のどんでん返しの連続はただ圧巻であります。

 なお、秀頼生存説については百数十年後を舞台にその真実を描いた『真田手毬唄』(米村圭伍)、また大坂の陣から数十年後の真田家(信之)と幕府の暗闘を描いた活劇『斬馬衆お止め記』(上田秀人)も面白い作品です。


 そしてドラマでも幸村とともに大活躍した後藤又兵衛の壮絶な戦いを描いたのが③『生きる故 「大坂の陣」異聞』(矢野隆)。
 生きるために大坂城に入った孤独な少年と又兵衛の交流から、死に花を咲かせるために戦いを繰り広げる最後の武人の姿が鮮烈に浮かび上がります。

 ちなみに本作、ドラマの方を意識していると明言されていますが、登場する幸村は、なるほどドラマのキャラクターのネガ像ともいうべき存在でなかなか強烈です。

 また、同じく五人衆を描いた作品としては、毛利勝永を主人公とした数少ない作品である『真田を云て、毛利を云わず 大坂将星伝』(仁木英之)も必読です。


 残る2作品は、せめてフィクションの世界では真田の痛快な活躍を読みたい、というところで伝奇性の強い作品を。

 まず④『柴錬立川文庫』(柴田錬三郎)は短編連作形式で九度山隠棲時代から大坂の陣に至るまでの真田幸村と勇士たち、そして周囲の英傑たちの姿を一人一話で描いてみせた名作。
 有名な史実・巷説を題材にしつつ、それを大胆に脚色して描き、短編ながらそれぞれ長編並みの密度を持つ作品であります。

 ちなみに同じ作者の『赤い影法師』は、その十数年後の寛永御前試合を舞台にした忍者ものですが、「実は生きていた」幸村と佐助が登場、またこれがえらく格好良いのでおすすめ。

 最後にドラマ(というかプロモーション)の方ではダメな感じながら、最終回で奇跡の出演を遂げた十勇士を描いた作品を。
 フィクションでは異能のヒーローとして描かれる彼らが大暴れするのが⑤『黄金の犬 真田十勇士』(犬飼六岐)であります。

 これまでも様々な作品で描かれてきた十勇士ですが、本作の彼らは忠誠心はどこへやら、戦国を自由気ままに放浪する一人一芸の豪傑たちという設定。
 とんでもない報酬と引き替えに大坂方(幸村)に手を貸す彼らの姿には、反骨のヒーローとしての真田(十勇士)像の最新アップデート版と言うべきものとして感じられます。


 おまけ。面白いけど真田丸ファンが読んだら卒倒しそうな作品の双璧は『徳川家康(トクチョンカガン)』(荒山徹)と『わが恋せし淀君』(南條範夫)でしょう。

 影武者家康が引き起こす大波乱を描く前者に登場する幸村は歴史に名を残すことに凝り固まった一種のサイコパス。大坂の陣の頃にタイムスリップしてしまった現代人を主人公とした後者に登場する淀君はほとんどサークルクラッシャー……
 と、ドラマをはじめ従来の人物像を粉砕する描写にひっくり返ること必至であります(が、もしかして……とも思わされたりもあったりして)


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