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2017.02.02

皆川亮二『海王ダンテ』第2巻 いよいよ始まる異境の大冒険

 超古代文明の遺産である本と魔導器を手にした少年・ダンテ(実は若き日の○○○○)が繰り広げる奇想天外な冒険を描く海洋冒険伝奇漫画の第2巻であります。正式に英国海軍の士官候補生となったダンテが向かうのはインド。そこでじゃじゃ馬未亡人を連れ帰る任務に就いたダンテの前に思わぬ敵が――

 「生命」の書を巡る南極での冒険の最中に行動を共にした英国海軍の人々に惹かれ、自らも海軍を志願したダンテ。パトリックとダミアン、同年代の友人もできた彼の乗る船は、インドに向かうこととなります。
 航海の目的は、現地の大富豪と結婚したイギリス人女性・フランシス・ニズベット(ファニー)嬢を連れて帰ること。ヒンドゥー教の「サティー(寡婦殉死)」……夫が死んだ際に、妻がその亡骸と共に焼かれるという儀式から、彼女を救出することが目的なのですが――

 しかしそこで待ち受けるのは、執拗にファニーをサティーにかけようとする教徒たち。町中の人々を敵に回すこととなったダンテたちですが、ファニーまでイギリスに帰ることを拒み、ダンテは思わぬ苦闘を強いられることになります。

 さらに海からダンテたちの船に予想もしなかった脅威が迫ります。何と百年前に処刑されたはずの海賊キャプテン・キッドとその不死の兵たちが襲ってきたのであります。
 書を狙うゾンビ海賊を退け、そしてファニーを連れてダンテは無事帰還することができるのか――


 というわけで、設定の紹介編的な第1巻に続くこの巻では、いよいよ海に出た主人公が繰り広げる大冒険……という、実にワクワクさせられる展開。
 何しろ後の○○○○提督だけに、海に出るのは当然と言うべきかもしれませんが、そこで繰り広げられるのは、貴婦人(?)救出という古式ゆかしい冒険活劇に加え、死から甦った大海賊を向こうに回してのバトルなのですから、盛り上がらないはずがありません。

 ダンテの持つ書「要素」と魔導器の能力――この世界を構成する分子を自らの意志で組み替え、物理的な力に変えるという能力。
 これは彼の体の一部を触媒に使うとはいえほとんど万能であるだけに、主人公無双となるのでは、という不安もありましたが、それはもちろん杞憂。

 ダンテが海軍という組織に加わり、共に戦う仲間ができたことで、その能力を使うのにいい意味で制限がかかった(使わずに切り抜けることが可能となった)ことが、物語にとってはポジティブに作用していると感じます。

 そして興味深いのは今回の舞台。インドという(イギリスにとっての)異境は、この時代を舞台としたフィクションではしばしば登場しますが、サティーという風習を中心に据えているのが印象に残ります。

 実際にはこの当時は既に廃れかけていた風習とのことですが(そしてそれは作中でも語られるのですが)、何故周囲がそれに拘るのかという点で一ひねりあるのが面白い。
 そしてそれが、単純に現地の人々だけを、あるいは西洋人だけ悪人としない作劇に繋がっていくのも巧みであります。

 しかし何よりも面白いのは、救い出すべきファニー自身がサティーを望んでいるという設定でしょう。もちろん単なる自殺願望ではなく、そこには彼女なりの深い理由があるのですが……そこから逆にダンテとの心の絆が生まれるというのが、実にイイのです。
 実はサティーからヒロインを助けて……というのは、『八十日間世界一周』のオマージュではないかなあと思うのですが、しかし見事な換骨奪胎と言うべきでしょう。

 そしてこの巻のラストでダンテたちが取る行動も、如何にも少年らしい正義感と無鉄砲さがあって、実に爽快、痛快。さらにここで史実を見れば、思わずニヤニヤさせられてしまうのであります。

 この巻では登場しないのかな、と思わされたライバル・ナポリオもまたとんでもない形で登場、二人の微妙な距離感も楽しく、少年漫画の王道を往く冒険活劇として(作者の作品の中でも最も「冒険」の語が相応しい作品ではないでしょうか?)大いに楽しませていただきました。


 しかし「敵」が手にした力はある意味無尽蔵。ラストで登場する次なる敵は、ある意味海賊の元祖というべき存在だけに、一筋縄でいくはずもありません。
 ダンテが、ナポリオが、仲間たちがこの強敵に如何に立ち向かうのか、そして如何なる冒険が待ち受けているのか……第3巻が待ち遠しいのです。


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