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2017.02.10

長谷川明『戦国外道伝 ローカ=アローカ』第3巻 急展開、そして明かされた纐纈城の秘密

 戦国時代の日本に現れ、次々と人々を狩り集めていく纐纈城。この魔界の存在を討伐するため、武田信玄により集められた外道者たちの戦いを描く本作もこの巻で急展開、纐纈城と外道者たちの最終決戦が描かれるのですが――

 川中島に現れ、不死身の兵でもって戦場を蹂躙した纐纈城。その纐纈城攻めを決意した武田信玄により、地獄を見る目を持ち、地獄の牛頭馬頭を喰らう力を持つ加藤段蔵を筆頭に、異能を持つ外道者たちが集められることになります。
 その外道者の一人を求めて常陸に向かった段蔵たちは、猿神憑きの剣客・猿御膳、そして彼と虚ろ舟の蛮女との間に生まれた子供を巡り、纐纈城の使者と激突することに――

 という第2巻の展開を受けてまず描かれるのは、猿御前の子・前勝坊を巡る戦いの行方。あまりにも無垢で儚い蛮女と、異形の猿神憑きの間に生まれた彼は、果たして母と父――異界からやって来た人間と、異形と化した人間の、どちらに近いのか?
 戦いの末に描かれる、人間という存在、命の在り方に繋がるその答えは、殺伐とした展開が続く本作において、一つの「愛」の姿を描き出すことになります。

 そして続いて登場するのは、新たな外道者……いやむしろ、彼の存在があったからこそ外道者が集められることとなったという一人の剣豪。その名は草深甚四郎!
 この名を聞いて盛り上がるのは、剣豪ファン――それもかなり偏った方でしょう。本作でも描かれる、盥に張られた水に斬りつけることで、遙か遠くの相手を斬ったという逸話で知られる「実在の」剣豪であります。

 なるほど、剣豪としてこれほど異界に近い存在はあるまい……と大いに盛り上がるのですが、しかしこの辺りから物語は急展開。終焉に向かって爆走していくこととなります。

 物語冒頭から纐纈城との戦いに巻き込まれてきた小姓・五郎丸――成り行きから段蔵らとともに対纐纈城戦の一員となっていた彼が纐纈城の手に落ちたことから始まる、纐纈城による武田家急襲。
 思わぬ決戦の始まりに、纐纈城に乗り込むのは、段蔵と死者が見える少女・火車鬼、前勝坊と歩き巫女のふふぎ、そして城の実験部屋から脱走した行者・長谷川角行――

 と、あまりに急な展開に驚かされるのですが、これは作中でも何度かメタ的に言及されるように、作品の完結を急がざるを得ない状況になったということなのでしょう。しかし、いや実に勿体ない。
 どうも展開的には「纐纈城の七人」とも言うべきものになのではないかと思われただけに――そしてこうした物語の面白さは、メンバーが一人ずつ集まってくる過程にあるだけに――急展開が悔やまれてなりません。

 甚四郎はもちろんのこと、こちらも実在の人物である角行も、突然の登場ではあるもののビジュアル、設定(特に人穴、宗教者というキーワードは「纐纈城」としては実に気になります)ともに、非常に美味しいキャラクターであっただけに――


 しかし本作は、そんな状況の中であっても、描かれるべきものはきっちりと描いてみせた、ということだけは言えるでしょう。
 その描かれるべきものとは、纐纈城主、いや纐纈城の生みの親の正体、言い換えれば纐纈城は何故存在するのか……その謎解きであります。

 纐纈城に突入した者たちの前で語られる、纐纈城誕生の秘密。そこには、遙か過去、遙か遠くの地で、死から甦ったというある男の存在がありました。
 その男の名はここでは伏せさせていただきますが、あまりにも意外のようでいて、「纐纈城」とは決して無縁な人物ではない、と言えばわかる方にはわかるでしょうか。

 そして「彼」の存在が纐纈城を……纐纈城で繰り広げられる地獄を生む、その過程の凄惨さには、ただただ圧倒されるばかり。
 さらに「彼」と、その目で文字通りの「地獄」を見てきた段蔵との思わぬ共通点(そして同時にそれは前勝坊の存在とも重なる部分が)に思い至れば、ただただもう唸らされるほかありません。


 物語展開には残念な点は残ったものの、描かれるべきものは描かれた本作。あるいは性急な展開故に、その結末にも違和感は残るかもしれません。

 しかし、生と死、現世と地獄、生者と死体、誕生と死亡……と、相反するものが入り乱れ、しかしそのほとんどがわかり合えず擦れ違うままに終わるこの結末は、途方もない虚無感を漂わせつつも、本作に相応しいもののようにも感じられるのです。


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