武村勇治『天威無法 武蔵坊弁慶』第8巻 前代未聞!? 秀衡vs清盛開戦
宿敵・平清盛を討たんとする源義経と弁慶の物語から、超絶の力を発揮する六韜を持つ者たちの天下を巡る戦いへと飛翔する驚天動地の物語もいよいよクライマックス。義経一行が奥州の藤原秀衡のもとを訪れたのをきっかけに、一気に六韜を持つ者たちの戦いに火蓋が切って落とされることになります。
かつて都を舞台に展開していった義朝・清盛・秀衡の三人の友情と夢。しかしその三人の関係が後白河院の悪意によって歪められ、壊れていった末にこの物語があることが、前巻では描かれました。
そしてこの巻の中心となるのはその三人の一人――藤原秀衡であります。
奥州の莫大な黄金を背景に、都何するものぞの心意気を見せてきた豪放無頼の秀衡。史実同様、義朝の遺児である義経を、そして双子の妹である遮那を庇護してきた秀衡は、二人にとっては頼もしくも温かい「秀じい」だったのですが――
しかし、秀衡もまた六韜の一つ・虎韜を持つ男。そしてその力は巨大からくりの製造と操作……そう、秀衡は巨大からくり兵団によって平清盛撃滅を企図していたのであります!
いやはや、史実では上に述べたとおり義経を匿いはしたものの、源平合戦においては静観を保っていた秀衡。しかし本作においては、この国に争いを招く呪いの書・六韜の力に毒され、からくり兵団を用いて因縁の清盛との全面対決に臨むことになります。
そして秀衡が天下獲りに立ったことで、残る六韜の持ち主も同様に動き出すことに――
かくて繰り広げられるのは秀衡vs清盛、そして源義仲vs平教経の決戦。後者はともかく、前者は史実が変わってしまう……どころの騒ぎではないのが本作の恐ろしさであります。
身の丈数丈はあろうかという巨大なからくり兵の力の前に文字通り薙ぎ払われていく平家の兵たち。しかしそこで発揮される清盛の犬韜の真の力。人心を操るものと思われた犬韜の力の極まるところ、操られた者は死をも超えた不死身の亡者と化すのであります。
すなわち、ここで繰り広げられるのは巨大ロボット軍団vsゾンビ軍団の決戦。今まで色々な源平合戦を読んできましたが、こんなとんでもないものはさすがに初めてであります。
しかし、前巻で描かれた過去の物語の中で描かれたのが、紛れもなく生身の人間の弱き心であったのと同様に、この地獄絵図の中で消費されていくのもまた、紛れもなく生身の人間たち。
その地獄にあって、弁慶は、遮那は如何に対するのか……六韜を操る地獄の鬼に対するために、自ら鬼になることは許されるのか。「その力」を持ち、その誘惑に晒されながらも戦い続けてきた弁慶は、一つの決断を下すことになります。
そしてこれに対するのが、六韜の力を持たぬまま、地獄の鬼の心を持った義経。ある意味この物語の中で全くぶれない男(表面では殊勝なことを言っていても全く当てにならないのはある意味凄い)である彼もまた、ある行動に出るのですが――それがこの物語に如何なる影響を及ぼすのか。
この第8巻発売時の作者の言によれば、本作はあと2巻……ということは次巻がラストということでしょうか。残された時間は短い中で、如何にこの物語に決着をつけるのか、非情に気になるところです。
しかしただ一つ、地獄の前では人間はただ鬼となるしかないのか……その答えが示されることには期待したいと思います。
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