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2017.03.09

山田秋太郎『墓場の七人』第1巻 屍人に挑む男と少年の生きざま

 別に専門家になったわけではないのですが、結果的にゾンビ時代劇の大半を取り上げているのではないかという気もするこのブログ。それだけゾンビ時代劇が増えているということかと思いますが、その中に新たな作品が加わりました。ありそうでなかった、七人の侍vsゾンビという作品が……

 突如として甦った生ける死者・屍人の群れの襲撃を受けた墓場村から、助っ人を探すという使命を背負って脱出した子供の一人・七平太。しかし彼は、町でトラブルに巻き込まれ、悪旗本の屋敷の牢に捕らわれの身に。
 そこで出会ったのは、腕は立つものの、あまりの残忍さで恐れられる人斬り――斬った相手の肉体を百の肉片に挽くことから百挽と呼ばれる男。初めは七平太を相手にしていなかった百挽ですが、しかし七平太が探しているのが屍人相手の用心棒であることを知り、そして旗本を前に必死の気迫を示した彼を認めて用心棒となることを肯います。かくて旗本屋敷を脱出した七平太と百挽改め一色は、墓場村への道を急ぐのですが――


 というわけで、冒頭にも述べたとおり、一言で表せば「七人の侍vsゾンビ」というシチュエーションの本作。考えてみれば野武士をゾンビに入れ替えたわけですが、しかしこれはコロンブスの卵というべきでしょう。決して少なくないゾンビ時代劇、そして七人の侍をベースとした「○○の七人」もの(?)にも、この趣向はほとんど初ではないかと思います。

 しかし本作は、野武士をゾンビに単純に代えただけの作品ではありません。その本作ならではの要素の一つ……それは一色と屍人の因縁であります。

 子供の頃、七平太同様、村を屍人の群れに襲われた一色。両親に隠されて辛うじてその場は助かったものの、村は全滅、そして屍人を率いる謎の男の前に、彼も深手を負わされたのであります。
 以来、屍人を追って旅しながらもその行方もわからず、彼は己の無力さを味わう中で荒れ、堕ち、人斬り「百挽」として恐れられるようになって――

 と、「○○の七人」ものは、あくまでも雇われただけの七人が、弱き者を守るために命を張るのが良いのであって、敵との因縁があるのはいかがなものか……という向きはあるかと思いますが、ここはどん底まで堕ちた男の復活劇であると見るべきでしょう(そもそも七人ものの最新作からして……)。


 そしてもう一つ、本作は少年の成長物語としての要素を持っています。

 用心棒を呼ぶために村から送り出された七平太。それは裏を返せば、彼自身にその場に残って戦うだけの力がないことにほかなりません。
 そして旅に出た先でもあっさりと捕らえられ、生と死ギリギリの選択を迫られることになるのですが……それでも屈しない彼の心が、一色を動かし、そして屍人との戦いを大きく動かしていくことになるのです。

 この第1巻のラスト、ついに村を襲った屍人の群れに、一度は絶望しかけた彼が、折れた刀を手に叫ぶ言葉……それは「七人」の雇い主として、真に敵と戦う者としてまことに相応しく熱い言葉。
 そしてその言葉に応えて……! というラストシーンには、こちらもただただ燃えるほかないのであります。


 もっとも、このラストシーンには、えっいきなり!? という印象を持つ方もいるかもしれませんが、私としては、いや、ここまで来たらこれしかなかろう、と答えるほかありません。

 男の復活劇と少年の成長物語――いわば二人の生きざまの発露が交錯した時に生まれた奇跡が、如何にして死者との戦いに道を切り開いていくのか。
 実は連載の方は次回で完結という状況、おそらくは本作は全3巻程度になるのではないかと思いますが、最後まで一気呵成に駆け抜けて欲しいと思います。


 それにしても中盤で一色が見せたとんでもなくメタな技(?)、漫画的には最強ではないでしょうか……いやすげえ。


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