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2017.03.01

戸土野正内郎『どらくま』第5巻 乱世を求める者と新たな道を求めるものの対決

 凄いのか凄くないのか謎の守銭奴・真田源四郎と、伝説の忍びの秘術を受け継ぐ凄腕・九喪、犬猿の仲と言うも生ぬるい迷コンビが大坂の陣直後の世界で大暴れする物語も、もう第5巻。奥州で忍びたちの暗闘の渦中に巻き込まれた二人を待つものは……

 心ならずも徳川家に手を貸すことになった二人が向かった先、それは軒猿十王の一人・天雄が暗躍するという奥州。
 伊達家の隠し財産を狙い、外道の医学薬学で人間を改造して操る天雄に対し、二人は天雄を仇と狙う大獄丸、九喪の元同僚の天才忍者・シカキン、そして伊達家の忍び・黒脛巾組と共に挑むことになります。

 狡猾な罠をかいくぐり、連携プレーの末についに天雄を仕留めたかに見えた源四郎たちですが、しかしその天雄は替え玉。そして二人は味方であったはずのシカキンと黒脛巾組に刃を向けられ、捕らえられることとなります。
 徳川家に深い恨みを抱くシカキン。そして彼が守る少女・木毎が狙う仇とは、彼女の父・幸村を手に掛けた源四郎……!


 というわけで、収録されたほとんど全話に、冒頭で過去の回想エピソードが入ることからもわかるように、各人が隠してきた過去が次々と明らかになり、絡み合っていくこの巻。
 そんなキャラクターたちの中心の一つは、もちろんというべきか源四郎であります。

 真田家当主・信之の甥――すなわち幸村の子である源四郎。しかし彼は信之の命で大坂城に入り、幸村を討ったという過去がありました。
 その真意が奈辺にあるかはいまだにわかりませんが、しかし幸村に身を寄せた者にとって、彼は不倶戴天の仇であることはまちがいありません。……彼の妹である木毎を含めて。

 そしてもう一つの中心となるのが天雄であります。
 かつて上杉家に仕え、今は徳川の下に付いた軒猿最強の十王の中でも、最悪の存在として知られる天雄――彼の所業の全てが明かされたわけではありませんが、静かなる巨人・大獄丸が憤怒を以て臨むという点だけで、それはある程度想像がつくというものでしょう。

 そしてさらに天雄を狙って現れるのは十王最強、言葉だけで人を殺せるという超絶の忍び・髑髏――そして今回、髑髏と大獄丸の過去の関わり、そして髑髏の意外すぎる正体の一端(よく見たら前巻にもその姿が……)がほのめかされるのであります。

 源四郎と天雄、二人を中心とした人間関係はこじれまくり、そもそもそれぞれはどこの陣営で、誰の味方であったのか、そもそも皆何のために戦っていたのか……と混乱してくるのですが、しかし後半、この戦いの背後にある巨大な陰謀と、そしてその原動力となる一つの想いが露わになることになります。

 かつてこの国で、百年以上続いた戦国乱世。本作は源四郎以外の登場人物はほとんど全員忍者という印象ですが、その忍者こそは、乱世においてその真価を発揮する、乱世の申し子であります。
 そしてその申し子たちから、乱世が……戦いが奪われようとする時、彼らは何を思うのか。それは言うまでもないでしょう。

 どれだけ矛盾と狂気に満ちたものに見えたとしても、自分が自分らしくあろうとすること、そうあることができる場所を求めるのは人の性であります。
 そうだとすれば、それを止めることができる者は、自分も同じ存在であると知りつつも、それでもその世界を捨て、新たな道を求めることができる者ではないでしょうか。

 そして前者の代表が天雄であり、後者の代表が源四郎であることは言うまでもありません。両者の対決は、乱世の終わりにいかなる道を選ぶのか、その選択に繋がる戦いでもあるのです。


 そしてその対決の先に何が見えるのか。たとえ天雄を倒したとしても源四郎に赦しの日は来るのか? シカキンの悲しみは、大嶽丸の怒りは癒える時が来るのか?

 忍者同士の秘術合戦の面白さもさることながら、それを支える登場人物の物語が、人生がどこに向かうのか……それを想像するだけでワクワクが止まらなくなってくる作品であります。


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