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2017.03.23

唐々煙『曇天に笑う 外伝』下巻 完結、三兄弟の物語 しかし……

 アニメ化、舞台化、実写映画化と、本編終了から時間が経ってなおも盛り上がる『曇天に笑う』。その外伝である本作もアニメ化が決定とのことですが、物語はこの巻でいよいよ完結となります。。大蛇(オロチ)が滅んでもなおその力を弄ぶ人間たちに対して、曇三兄弟が最後の戦いを挑むことになります。

 かつて政府によって極秘裏に研究されてきた大蛇細胞。大蛇が倒されて以来、破却されたはずの研究が、今なお続けられている……人体実験の被験者と遭遇したことで、この忌まわしい事実を知ってしまった空丸と武田。
 兄・天火のような犠牲者を出さないため、実験施設の存在を探った二人は、そこで自分たちの上司であった「犲」の隊長・安倍蒼世をはじめとするメンバーが企てに関わっていたのを知ることになります。

 大蛇と戦うために存在してきた、そして誰よりも大蛇の脅威を知る蒼世たちの、裏切りにも等しい行為に衝撃を受ける二人。そんな二人と、同行する宙太郎と錦に襲いかかるのは、被験者の最後の生き残りである凶暴な男・虎。
 そして妃子とともに旅を続けていた天火も、(意外な人物から)一連の事件を聞かされ、空丸たちに合流すべく急ぐのですが――


 本編終了後に描かれる前日譚や後日譚という、文字通りの「外伝」としてスタートした本作。その後、中巻辺りから本作はその様相を変え、むしろもう一つの本編、「続編」とも言えるような内容で展開してきました。

 この大蛇細胞実験のエピソードに加え、さらに比良裏と三兄弟の前から姿を消した牡丹のエピソードまで並行して展開し、果たしてあと1巻で完結するのか……と中巻を読んだ時には感じたのですが、中巻よりも約100ページ増量となったものの、ここに大蛇細胞を巡る物語は完結することになります。。

 天火と蒼世との対決、空丸と蒼世との対決、空丸たちと黒幕の対決、空丸と虎の対決……バトルに次ぐバトルの果てに描き出されたのは、天火の跡を継ぎ、曇家の当主として、そして一人の剣士として空丸が立つ姿であります。

 この『曇天に笑う』という物語の本編において、曇家と大蛇の長きに渡る因縁には決着がつきました。その中で空丸の成長も描かれてはきたのですが――
 なるほど、空丸の天火超え、蒼世超えは明確には描かれなかったことを思えば、この外伝は「曇家と大蛇」の物語を踏まえたものでありつつも、「曇家の三兄弟」の物語、特に曇空丸の物語であったと言うべきなのでしょう。

 この巻に入ってからのバトルの釣瓶撃ちはまさにこれを描くためのものであった……そう感じます。

 もっとも、その中で描かれた空丸のある種異常な、危険なまでの捨身ぶり、さらにいえば宙太郎の強さへの想いについては、その先が描かれずに終わった感もあります。
 しかしそれは『曇天に笑う』とはまた別の――大蛇との戦いを描く物語とは離れた――三兄弟自身の物語ということになると思えばいいのでしょう。

 何はともあれ外伝も大団円。これまでの三兄弟の、周囲の人々の過去を振り返りつつ、その先の未来にも希望の光を感じさせる美しいエピローグとともに、本作は完結したのであります。
(以下、本作のある意味核心に踏み込みます)


 ――いや、比良裏と牡丹はどこへ行った?

 そう、本作において牡丹を探す比良裏は、この下巻冒頭でフェードアウト。物語が終盤に近づくにつれ、その不存在が気になって仕方がなかったのですが……まさかそのまま終わるとは。

 これは一体どういうことなのかしら……とさすがに考え込んでしまったのですが、どうやら二人の物語は、『泡沫に笑う』として完結する様子。
 外伝の外伝というのはちょっと驚かされましたが、大蛇に対する存在として、曇家に並んで比良裏と牡丹のカップルが存在することを思えば、この複線化はありえることなのかもしれません。
(この辺り、『煉獄に笑う』では両者の関係をうまくアレンジしていると思いますが)

 何はともあれ、ファンとしては最後までついていくしかありません。長きに渡る物語の最後の最後に何が描かれるのか……それが笑顔であることを疑わず、待ちたいと思います。

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