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2017.05.27

大羽快『殿といっしょ』第11巻 殿、最後の合戦へ

 あらゆる戦国武将をボンクラの面白キャラにデフォルメして描いてきた戦国四コマギャグ漫画、久々の単行本……と思いきや、何とこれにて最終巻。これまでずっと楽しませてきていただいただけに非常に残念ですが、最後まで殿いつワールドは健在であります。

 どの武将を主人公にするということはなく、戦国時代の様々な場所、様々な時期を切り取り、そこで活躍する様々な武将を描いてきた本作。
 眼帯に異常な熱意を傾けるガンター(眼帯マニア)の政宗、相手をおちょくることでは天下無敵の昌幸・幸村(と被害者の信幸)、お笑い命の秀吉と三成、異常なまでに我慢を好む家康etc.――と、その武将の事績や逸話を大きくデフォルメして、テンポの良いボケとツッコミの連続で展開してきた作品であります。

 それだけにいつ誰が飛び出してくるかわからない作品であるのですが、最終巻となった本書は、大きく分けて、
・長宗我部元親と一条兼定の四万十川の戦い
・人質時代の幸村と上杉家・豊臣家
・秀吉の小田原征伐
の三つのエピソードで構成されています。

 そのうち最も分量が多い幸村ネタは、これは間違いなく昨年の大河ドラマ合わせだと思われますが、これまでも本作で猛威を振るってきた幸村の傍若無人なまでのマイペースぶりがフル回転。
 上杉家と豊臣家で彼が過ごした人質時代がここでは描かれるのですが、本作の両家は、見かけは強烈な強面で笑わん殿下の上杉景勝と、天下の仕置きもお笑い次第の秀吉と、全く対照的な二人(そして彼らを支える兼続と三成もそれぞれに強烈なキャラ)で、その二人の間に幸村が挟まるのですから、面白くないわけがありません。

 特に豊臣家サイドは、まだ元気だったころの大谷吉継やこれまであまり出番のなかった(もしかすると初登場?)清正・正則が加わって、実に賑やかで楽しい。
 さらにそこに異常なゲラのお茶々を巡るドラマが展開して――と、微妙にいい話が挟まれるのも本作ならではであります。


 そしてラストに描かれるのは、この茶々の物語も絡んで勃発する小田原征伐。
 先に述べたとおり、時代と場所を次々と変えて展開される本作だけに、どのようにひとまずの決着をつけるのか――と思いましたが、なるほど、こう来たか! と膝を打ちました。

 なにしろこの戦は、天下統一に王手をかけた秀吉が、半ば示威行動も含めて全国の大名に参陣を促したいわばオールスター戦。
 秀吉・三成・家康・昌幸・景勝・元親・氏郷・宗茂・政宗(大遅刻)、そして相手は氏直と、本作でこれまで活躍してきた面々が、史実の上でも集っていたのですから、これほどラストに似つかわしい展開はないでしょう。
(もちろんオールスターという意味では関ヶ原、大坂の陣がありますが、あちらは殺伐としすぎるので……)

 滑り込みで登場の忠興と玉(ガラシャ)のあのネタがあったり、いくつもの夢の顔合わせもあったり――と実に賑やかで、実質ラスト二話程度の分量ではあるものの、本作にふさわしく賑やかで明るい結末でありました。
(個人的には、三成の忍城攻めでの不手際の伏線が、実に本作らしい形で描かれているのに感心)


 もちろん続けようと思えばいくらでも続けようはあるのではないかと思いますし、大好きな作品であっただけにこれで完結は寂しいのですが――繰り返し述べてきたように、様々な時代と場所を舞台に、それも四コマでギャグを描くというのは、相当な難易度のはず。

 まずはお疲れさまでした、本当に楽しかったですと、心の底から申し上げたいのであります。


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