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2017.06.24

上田秀人『日雇い浪人生活録 2 金の諍い』 「敵」の登場と左馬介の危険な生活

 幕府を米本位制から金本位制に切り替えるという吉宗の遺命を受けた田沼意次に力を貸すこととなった両替商・分銅屋仁左衛門。その分銅屋に挟まれた日雇い浪人・諫山左馬介の苦闘を描くユニークなシリーズの第2弾であります。早くも現れた「敵」に対し、左馬介と分銅屋はいかに挑むのでしょうか。

 分銅屋仁左衛門に雇われ、分銅屋が買った隣の空き店の片付けをしていた際に不審な帳面を見つけた左馬介。その帳面がきっかけで、二人の周囲には怪しげな連中が出没することになります。
 一方、吉宗がし残した最後の改革として、既に行き詰まりを見せた米本位制を、金本位制に切り替えることを命じられたお側御用取次・田沼意次は、餅は餅屋と、江戸市中の商人を手駒に引き入れることを目論みます。

 かくて交錯することとなった江戸屈指の両替商と、幕府きっての出世頭の運命。そしてその誠実さを見込まれて分銅屋の用心棒となった左馬介も、否応無しに江戸の世を動かす企てに巻き込まれることになって……


 と、一見人情ものめいたタイトルとは裏腹に、やっぱり危険な「生活」を送ることになってしまった左馬介の奮闘を描く本作。
 今回はいよいよ本格的に分銅屋を狙う敵が登場、江戸有数の札差・加賀屋に加え、幕府側にも分銅屋を、いや田沼を敵視する勢力がいることから、状況はいよいよややこしく、上田作品らしくなってきました。

 そしてそんな敵勢力が数々登場する中で重要になるのは、言うまでもなく左馬介の存在なのですが――しかし人柄は申し分なしなれど、腕前の方は少々心許ないのが面白い。
 剣豪ものでは定番の、相手の殺気を背中で感じ取るというスキルがあるはずもなく、そのままでは心配だからとわざわざ剣術道場に通わされるのですから(そんな主人公初めて見ました)、用心棒としてはいささか心許ないキャラクターが、逆に個性的に映ります。

 しかしもちろん全くの役立たずではなく、父譲りの鉄扇術の遣い手というのがユニークで、間合いは狭く、ほとんど完全に防御主体という鉄扇術が果たして実戦でどこまで役に立つのか――と興味をそそられます。
 強すぎる主人公は時に興を削ぐものですが、その辺りをうまくかわし、個性的な殺陣を用意してみせたのは、さすがというべきでしょう。

 そして、これは前作の紹介でも述べたかと思いますが、武士の世界――「権」の世界と、商人(庶民)の世界――「財」の世界、二つの世界を描く本シリーズにおいて、武士と庶民の間の存在である、強すぎない主人公、武士だけれども刀を使えない主人公という設定は、物語のテーマに即したものと言えるでしょう。

 そしてそんな彼と対照的に、ヒロイン(?)のクールビューティーな御庭番の神出鬼没ぶりも楽しく、この辺りの人物配置も、またベテランの技であります。


 さて、こうして「敵」は登場してきたものの、田沼と分銅屋の壮大すぎるプロジェクトはまだまだ始まったばかり。
 帳面を武器に、幕府の財務担当たる勘定吟味役に揺さぶりをかける分銅屋の策は当たるのか。動き出した政敵たちの攻撃を、田沼はかわすことができるのか。

 そしてその中で左馬介の生活はどうなってしまうのか――いよいよ本格化する金の諍いがどこに向かうのか、最新巻の第3巻も近々にご紹介いたします。

『日雇い浪人生活録 2 金の諍い』(上田秀人 角川春樹事務所時代小説文庫) Amazon
金の諍い―日雇い浪人生活録〈2〉 (時代小説文庫)


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