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2017.06.27

戸土野正内郎『どらくま』第6巻 戦乱の申し子たちの戦いの果てに

 あの幸村の子にしてとんでもない守銭奴の商人・真田源四郎と、伝説の忍び・佐助の技を継ぐ忍者である野生児・クモ――相棒なのか宿敵なのか、おかしなコンビが戦国の亡霊たちに挑む物語もこの巻で完結。伊達家の忍び集団に潜み、戦国を上回る混沌をもたらさんとする怪忍・天雄との戦いの行方は――

 怪しげな動きを見せる忍びたちの動きを追って奥州に向かった源四郎とクモ。そこで彼らは、伊達家の黒脛巾組と、元・軒猿十王の一人・天雄の暗闘に巻き込まれることになります。
 クモのかつての仲間であるシカキンとともに天雄を倒したものの、味方と思っていたシカキンと黒脛巾組に捕らえられ、絶体絶命となった源四郎一行。

 そしてさらに悪いことに、替え玉を使って生き延びていた天雄、そして彼と結んでいた黒脛巾組の頭領・世瀬蔵人が正体を現し、そこに天雄を追う大嶽丸、十王の頭・髑髏までが現れて、大乱戦が繰り広げられることに……


 というわけで、この巻で繰り広げられるのは、ほとんど冒頭からラストまで、超絶の技を持つ忍者たち――いや、前巻でついに見せた真の実力をもって、忍者ならぬ源四郎も参戦――の一大バトルであります。

 かくて展開するのは、大嶽丸vs天雄、髑髏vs天雄、シカキンvs蔵人、源四郎vs蔵人、そしてクモvsシカキンと、見応えしかないようなバトルの連べ打ち。
 特に医術薬術を以て、他者のみならず自らの体まで改造して暴れ回る天雄は、まったく厭になるくらいのしぶとさで、この伊達編のラストを飾るにふさわしい怪物的な暴れぶりでありました。


 しかし、そんなダイナミックな死闘の数々を通じて描かれるのが、どちらが強いかという腕比べだけでなく、彼らそれぞれの戦う理由――言い換えれば、戦乱が終わった後の時代を如何に生きるべきか、という問いかけへの答えのぶつかり合いであることは見逃せません。
 何しろその問いかけは、この物語において様々に形を変え、幾度も問いかけられてきたものなのですから。

 長きに渡りこの国で繰り広げられてきた戦乱の時代の、その最後の戦いともいうべき大坂の陣の翌年を舞台とする本作。
 破壊と殺戮が繰り返され、源四郎流に言えば大いなる金の無駄遣いであったその時代に、しかし、自分自身の夢を見た者たちも確かに存在しました。そしてその戦乱の中においてのみその存在を許される者たちも。

 前者を武将、後者を忍者と呼ぶことができるかもしれませんが――いずれにせよ、戦乱あってこその存在であった彼らが、戦乱が終わった後に何を望むのか? 
 本作の主人公の一人である源四郎は、そんな戦乱の申し子たちの想いを見届け、そしてジャッジする存在であったと、この巻を読んで、改めて感じさせられました。

 そしてそれは、己の父・幸村を討つことで戦乱の時代に終止符を打った彼だからこそできる、彼だからこそやらなければならない役目であるとも……


 さて、冒頭でこの巻を以て本作は完結と述べましたが、しかし物語はまだまだその奥に広がりがあることを窺わせます(本作は人物設定等相当しっかりと行われているらしく、ちょっとした描写が後になって伏線とわかったりと、幾度も感心させられました)。
 いわばこの巻は、伊達編の完結とも言うべき内容。ここでの戦いは終結したものの、解消されぬ因縁は幾つも残されています。

 何よりも、戦乱の時代を引きずり、そして戦乱の時代に囚われた者たちはまだまだ数多くいるはず。だとすれば、源四郎とクモの旅路もまた、これからも続くのでしょう。
 ラストにとんでもない素顔(とか色々なもの)を見せた髑髏の存在もあり、いずれまた、源四郎たちの活躍を見ることができると、信じているところであります。


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