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2017.07.23

朝日曼耀『戦国新撰組』第2巻 新撰組、いよいよ本領発揮!?

 戦国へのタイムスリップはもはや定番ネタ……というのは言い過ぎかもしれませんが、しかしその中でもユニークさでは屈指の一作、あの新撰組が、こともあろうに桶狭間の戦直前にタイムスリップして大暴れする物語の第2巻であります。第1巻の衝撃の結末を経て、事態はいよいよややこしいことに……

 いかなる理由によるものか、突然、壬生の屯所から戦国時代の桶狭間周辺に放り出された新撰組。その一人である三浦啓之助は、土方、島田らとともに木下藤吉郎と蜂須賀小六に捕らえられ、信長の前に引き出されることになります。
 そこに乱入してきた近藤、井上、斎藤らにより、一時は形成逆転したかに見えた新撰組サイドですが、柴田勝家をはじめとする怪物めいた戦国武者たちの前には分が悪い。近藤が、島田が深手を負う中で、啓之助は思いも寄らぬ行動に出ることに――


 と、啓之助によって信長が○○されるという、まさしく「何してくれてんだ!」というしかない衝撃の展開を受けて始まるこの第2巻。
 自分たちの命を守り、未来の天下人を救うためとはいえ、豪快に歴史を変えてしまった啓之助ですが(この辺りのあっけらかんぶりがまた彼らしい)、藤吉郎もそれに乗ってしまうのがまた面白い。

 主君と仰ごうとしていた人間を……というのにこの行動というのは、一見不条理に見えるかもしれませんが、まだ本格仕官前というこのタイミング、そして彼の合理的のようでいて博打好きな性格を考えれば、この選択はアリでしょう。
 その後も大きな犠牲を払いつつ、藤吉郎と新撰組は、こともあろうに織田家の懐に飛び込むという奇策に出るのですが……


 しかし大混乱の中で忘れそうになりますが、桶狭間の戦がなし崩し的に消滅してしまったことで、いまだ今川義元の軍は健在。そしてそこには、やはりタイムスリップしていた山南、沖田、藤堂の姿が……

 自分の刀を存分に振るえる時代にテンションのあがりまくった沖田によってさらに歴史が変わっていく中、織田攻めの先方を命じられた松平元康。
 彼こそは言うまでもなく後の徳川家康、新撰組が忠誠を誓った徳川幕府の祖を守るため、山南たちも大きな役割を果たすことになるのであります。

 主人公の敵サイドにも未来人(主人公の同時代人)が!? というのは、タイムスリップものでは定番の展開の一つではあります。
 しかしそれがかなり早い段階で登場、しかもその「敵」が、(少なくともこの時点では)鉄の結束を誇っていた新撰組の同志とは……これには驚き、テンションが上がりました。

 しかしそれ以上にテンションを上げてくれるのは、この沖田の、そしてこの巻から本格的に活躍する斎藤の「強さ」であります。


 実は第1巻の時点で個人的に不満に感じたのは、新撰組があまり活躍していないというか、強くない点でした。

 過去にタイムスリップといえば、(女子高生主人公を除けば)未来の知識や技術でチートして大活躍、というのが定番。
 しかし本作の場合、いきなり新撰組は野武士に蹴散らされ、土方も蜂須賀小六に一騎打ちで敵わず――といきなりピンチの連続。

 もちろん冷静に考えれば、戦が数十年続いてきた時代にテクノロジーレベルが少々高い時代の人間がタイムスリップしても、さほどアドバンテージにはならないのはむしろ当然なのかもしれません。
 しかし折角(?)タイムスリップしたのだから、戦国時代での新撰組の無双の活躍を見たい――それも人情でしょう。

 そしてその気持ちは、上で述べた沖田を、そしてさらに本多忠勝と一騎打ちを演じた斎藤を通じて満たされることになるのです。
(そしてその斎藤の活躍に至るまでに、土方の巧みな指揮があったというのも嬉しい)


 ついに戦国の世で本領を発揮することとなった新撰組。しかし彼らの存在によって、戦国の世の混迷は一層深まり――歴史の歯車の狂いはいよいよ大きくなることになります。
 さらに「もう一人」(いや二人?)がこの状況に絡むことにより、歴史はどこに向かうことになるのか。そしてその中で新撰組は、啓之助はいかなる役割を果たすことになるのか?

 新撰組隊士の中でまだ登場していないあの男とあの男の行方も含めて、まだまだ先が読めない物語であります。


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