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2017.07.10

廣嶋玲子『妖怪の子預かります 4 半妖の子』 家族という存在の中の苦しみと救い

 廣島玲子によるちょっとダークな妖怪時代小説の本シリーズも、快調に巻を重ねて早くも第4作目。妖怪の子を預かることとなった少年・弥助を主人公とする本シリーズですが、今回彼の前に現れるのは、少々訳ありの少女――タイトルのとおり、妖怪と人間の血を引く少女なのであります。

 江戸の貧乏長屋に盲目の美青年、実は元・大妖怪の千弥とともに暮らす少年・弥助。
 かつてある事件がきっかけで妖怪の子預かり屋――その名のとおり、妖怪たちの子供を短期間預かる役目を務めることとなった彼は、それ以来、様々な事件に巻き込まれながらも、妖怪たちとの絆を深め、人間として少しずつ成長してきました。

 短編連作集的な性格の強かった前作では千弥の隠された過去が描かれるなど、弥助の出番は少な目だったのですが、本作においては妖怪の子預かり屋としての彼の姿を再びクローズアップ。
 千弥の宿敵の大妖怪・月夜公に仕える三匹の鼠の微笑ましい願い、憑き物付きの手鞠など、いかにも本作らしいユニークさがあったり、ドキッとするような重さのあるエピソードが描かれた先に始まるのが、本作のメイン――半妖の子の物語であります。

 ある日、人間姿の化けいたち・宗鉄が弥助のもとに連れてきた8歳の娘・みお。宗鉄と人間の女性の間に生まれたみおは、最近母親を亡くし、宗鉄との間に深い深い心の溝ができてしまったというのです。
 いえ、溝ができたのは宗鉄との間だけではありません。周囲の全てに対して心を閉ざしたみおは、両目のみが開いた白い仮面をかぶり、外そうとしないのであります。

 途方に暮れた宗鉄からみおを預かったものの、自分に対しても心を開かず、逃げ隠れしてしまうみおに手を焼く弥助。しかしその間も弥助のもとに預けられる妖怪の子たちと触れ合ううちに、みおも少しずつ弥助に心を開いていくのですが……


 毎回、可愛らしい妖怪の子たちが繰り広げる騒動をユーモラスに描きつつも、それと同時に、読んでいるこちらの心にいつまでも残るような、重く、恐ろしく、苦い物語をも描いてきた本シリーズ。
 今回もその苦みは健在なのですが――それを生み出すものは、もちろんみおの境遇にほかなりません。

 妖怪と人間という種族を超えた愛の結晶を授かりつつも、しかしその娘が妖怪の血と姿を引くのではないかと恐れ続け、心を病んだみおの母。
 母に愛されず、そしてその原因となった父を憎み――誰が悪いわけでもない、ほんのわずかの掛け違いで、どうしようもなくすれ違ってしまったみおと両親の姿は、「家族」という普遍的な存在を背景にしているだけに、幾度もこちらの心に突き刺さるのであります。

 そしてそれは、終盤に登場する、みおのネガともいえる存在、あるいはあり得たかもしれない彼女の未来の姿と対比されることで、より鮮烈に感じられるのです
(さらにいえば、ここでみおと家族の姿に仮託されるものが、現代社会でしばしば見られるものであることに、児童文学者として活躍してきた作者の視点を感じた次第)


 はたしてみおと宗鉄は救われるのか、いや、弥助はみおを救うことができるのか――その答えはここで書くまでもないことではありますが、微笑ましく、何よりもキャラクターたちの個性がよく表れた結末は、必見であります。

 と思いきや、ラストには思わぬ人物の口から次作への引きが飛び出し、まだまだ広がる本シリーズ。冬に登場予定の次作がまた楽しみなのです。


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