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2017.07.11

ほおのきソラ『戦国ヴァンプ』第4巻 混迷する少女久秀と世界の運命

 タイムスリップ女子高生ものと、人外信長もの――時代ものでは比較的メジャーな(本当に?)二つを合体させたら大変なことになってしまった本作、松永久秀になってしまった主人公・ひさきと、彼女を愛する吸血鬼・信長が織りなす歴史は、様々な横やりのおかげで混迷を極めることとなります。

 何者かの手によって戦国時代に招かれた現代の女子高生・ひさきと、彼女を庇護した吸血鬼の王・三好長慶によって、瀕死となったところを救われ、吸血鬼となった信長。
 長慶によって、今は行方不明の腹心・松永久秀の名を与えられたひさきは、久秀の実の弟・長頼に支えられながら都で暮らすことになります。

 そんな中、実は戦国のヴァンパイアハンターであった真・久秀によって、三好一族は次々と斃される事件が発生。長慶はいずこに姿を消してしまい、残された吸血鬼と人間のハーフ・三好義継が大暴走して将軍義輝を襲撃、ひさきはその罪を着せられ、そして長頼は瀕死の深手を負うことに……


 と、大筋は合っているにもかかわらず、ディテールでは本当に大変なことになっている本作。

 大変な中でもひさきラブの信長は吸血鬼の瞬間移動能力で彼女にまとわりつき、ひさきと一緒にタイムスリップして家康役になってしまった幼なじみのはじめは、歴オタの知識を活用して彼女を支え……
 と、役に立っているのかいないのか微妙な男どもはさておき、ひさきはこの世界で生き抜き、少しでも犠牲を減らすために、今日も戦いを続けることになります。

 しかしそんな決意を胸にした彼女が演じるのが、よりによって松永久秀というのは運命の皮肉、というより悪意。東大寺での戦いに引きずり込まれた彼女は、歴史通りに大仏を焼いた人間という汚名を着せられることになってしまうのです。
(そんな中で、大仏消火よりも人命救助を優先したり、結果として大仏がなくなって大ショックを受けたりする彼女の姿は、それはそれである種のリアリティがあるかも……と妙な感心をさせられます)

 しかしこの世界を支配する運命は、さらに彼女を、そして信長をはじめとするこの時代の人々を振り回します。
 物語から一度は退場したあの人物この人物が、異なる名を得て再び歴史の表舞台に登場。さらに舞台は近畿と東海だけかと思いきや甲州にも広がり、あの超大物が、妖魔と手を組んで暗躍。そして信長の忠臣かと思われた秀吉もまた……

 と、異形の戦国ものとしても楽しくなってきてしまった本作。
 終盤では長慶改め○○○○が、この手の作品では本当に禁句なことを言い出して「おいっ!」とツッコミたくなりましたが、この辺りの成り行きも含め、想像以上に本作の世界は(もちろん面白い方向に)広がってきたと言わざるを得ません。

 その一方でラストには、そういえばこの人のことを完璧に忘れていた――な濃姫が登場。ひさきと信長との三角関係も気になるところで、本当にあらゆるところで先の読めない、先が楽しみな作品なのです。


 ちなみにこの巻で初登場したキャラクターの一人が、かの服部半蔵。しかしこの半蔵、一応常人ながらキャラの濃さが半端ではなく、こちらも要チェックであります。


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