せがわまさき『十 忍法魔界転生』第11巻 浅ましき「敵」との戦いの末に
原作通りの天草四郎のあっけない最期と、原作にはない意外なゲストキャラの登場が描かれた前巻。しかし四郎の残した呪いの言葉に衝撃を受けた十兵衛を含め、プレイヤーが入り乱れた状態で道中双六はなおも続きます。そしての果てに待つのは、その十兵衛の最も恐れる相手であります。
粉河寺での決闘の末、お品を喪い、そして四郎を倒した十兵衛。しかし四郎が今際の際に十兵衛に告げたのは、残りの転生衆の中に、彼の父・宗矩がいることでした。
仮に父が加わっているとすれば、紀州大納言・頼宣の陰謀を明らかにするわけにはいかない。悩んだ末に十兵衛は、密書を託した弥太郎を柳生十人衆の二人に追わせ、自分たちは、なおもお雛を捕らえた頼宣一行を追うことになります。
というわけで、和歌山から柳生にかけて入り乱れる敵味方は、
・十兵衛と柳生十人衆(いわば本隊)
・頼宣一党と転生衆三名
・弥太郎
・弥太郎を追う十人衆
・弥太郎を追う根来衆
となかなかにややこしい状況。
幸いと言うべきか、この辺りの状況はテンポよく展開していくのですが……ついに柳生に弥太郎がたどり着き、これはこれで一大事――となったところに出現したのはかつての柳生の主・宗矩。
かつての家臣を、門人たちを無惨に斬り捨て、捕らえた弥太郎を責め苛む宗矩に対し、十兵衛は(自分たちが望んだとはいえ)お縫、おひろをただ二人で敵陣に遣わすという非情の奇策を取るのでした。
それこそは父・宗矩おびき出しの策。宗矩の父、自分にとっては祖父たる石舟斎が遺した、新陰流正統の秘奥書と三人娘の引き替えを持ちかける十兵衛ですが、しかし魔人と化した宗矩が、それを黙って受け入れるはずもありません。
かくて、皮肉にも宗矩の墓のある法徳寺を舞台に、父子の禁断の決闘が始まることに……
というわけで、毎回クライマックスの本作でも特に山場とも言うべき十兵衛と宗矩の決闘。
同門対決という点では既に如雲斎とのそれが描かれていますが、しかし今回のそれは、それ以上に父と子というより大きな要素が加わっていることで、非常に重いことは言うまでもありません(深作版ではラストバトルなのもむべなるかな)。
……が、そのドラマ性も、当の宗矩が変態ツインテじじいとなってしまったことで、だいぶ薄れてしまった印象は否めません。
確かに漫画的には、精神の怪物性を示す意味でも必要なデコレーションなのだとは思いますが、しかしそれによって、「父と子」が死闘を繰り広げるという悲劇性は薄まり、「ヒーローと敵」の戦いの色がより強くなってしまったようにも感じられます。
とはいえ、謹厳実直を絵に描いたような人物が、かような変態めいた姿になり、幽冥の境を越えての再会を喜ぶどころか、青筋立てて相伝書をよこせと迫る姿は、ただ浅ましいとしか言いようがありません。
そんな父を目の当たりにした十兵衛の心中を思えば、胸が塞がるばかりで、決着の後に彼の隻眼に光るものがあったことは、これはもう当然というほかありません。
(それでもなお、一種の「ゲーム」をここで仕掛けるしかなかった非情!)
しかしそれでもなお、魔界転生衆との戦いは続きます。三人娘奪還は果たせず、心に深い傷を負った十兵衛に何ができるのか。彼女たちに頼宣の毒牙が迫る中、それを止めることができる者はいるのか……
残る転生衆は荒木又右衛門と宮本武蔵の両巨頭。いよいよクライマックスも近づいてきたと言うべきでしょうか。
そして頼宣といえば、この第11巻の表紙は頼宣。この巻では魔界転生は不要とすら言い放つ頼宣ですが、彼もまた転生衆並みのビジュアルゆえ、それに妙なおかしみが沸いてしまうのは、これはもちろん個人の感想ですが……
しかし偶然とはいえ、冒頭とラストの両方で落花狼藉に及ぼうとする姿が描かれるのも、なんとも。
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