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2017.08.24

殿ヶ谷美由記『だんだらごはん』第2巻 悩みと迷いを癒やす「食」、史実の背後の「食」

 新撰組に集った若者たちの姿を、「食」というユニークな切り口から描いてみせる新撰組漫画の第2巻であります。それぞれに悩みを抱えながらも楽しく暮らしてきたものが、ある事件がきっかけで離れ離れになった斎藤一と沖田総司。それぞれ京に向かう彼らを待つものは……

 江戸の試衛館にたむろっていた若き剣客たちの中でも、同い年でともに剣の腕が立ちながらも、性格は正反対の山口一と沖田総司。
 それでも腐れ縁と言うべきか、何かと行動を共にしてきた二人は、やがて浪士組結成のため、試衛館の面々と京に向かうことになります。

 しかしその前日、一はある事件が原因で一方的に恨みを持つ相手に襲われ、思わず返り討ちにしてしまうことになります。
 自首しようとしたものの、土方に名を捨てて生きろと諭され、一は斎藤一と名を変えて、一足先に江戸を出ることとなります。
 一方、中山道を京に向かう試衛館組ですが、総司は一が人を斬ったのは自分のせいだと、罪の意識を感じて……

 と、非常にシリアスに始まったこの巻では、総司と一、それぞれの姿が交互に「食」を交えて描かれることとなります。

 罪の意識から食欲を無くした総司に土方が作った鍋の味、一人京に上った一が戸惑う京のうどんの薄味……
 彼らが悩み、迷う時でも、常に「食」は彼とらと共にあります。

 どれほど苦しく辛くても、人は生きている限り物を食べなくてはなりません。
 総司と一ももちろん同様。二人の悩みと迷いを受け止め、癒やすように、彼らが様々な「食」と出会い、それに力をもらって少しずつ前に歩んでいく姿の、本作ならではのしみじみとした味わいが実にいいのであります。


 しかし、そんな彼らのパーソナルな物語が展開していく一方で、大きな歴史の流れも――すなわち、新撰組結成に向けた動きも加速していくこととなります。

 幕府のために結成されたはずの浪士組が、清河八郎の新徳寺での演説によって一転、尊皇攘夷の尖兵として江戸に向かうことになる……
 これに反発した近藤派と芹沢派が京に残留、彼らが新撰組の母体に――というのはあまりにも有名な史実ですが、この巻で描かれるその史実の背後にも「食」が、というのは、これも別の意味で実に本作らしくて面白い。

 何しろその新徳寺での会合前日に、それまで不仲だった近藤派と芹沢派――というより芹沢鴨を宥め、近づけるため、近藤派の面々が料理に挑むというのですから驚かされます
 酒乱の芹沢を抑えるには、酒だけでなく何か食べさせればいい。それも彼が喜ぶような、郷土の食を――という彼らの作戦は、いささか即物的ではありますが、重いエピソードが続いていた中で、これはこれでホッとさせてくれる展開であります。

 しかしそこで彼らが選んだ料理が、あまりにも意外というか――水戸と言ってコレか! というようなものなのには驚かされますが、それが思わぬところで芹沢と清河の人物像の違いを浮き彫りにするくだりは実にうまい。
 ユルいようでいて鋭い視点を持つ、本作の面白さをここで改めて見せられた思いであります。


 そして騒動が続く中、思わぬ形で再会することとなった一と総司。これがまた、ある意味実に本作らしい形で微笑ましいのですが、一転、総司の口からは衝撃的な言葉が吐かれることになります。

 まだまだ激動の展開が予想される中、一と総司は再び肩を並べて戦うことができるのか、そしてそこに「食」はどのような形で絡んでいくのか?
 「食」という味付けのおかげで、なかなか先が読めない――そしてそれがもちろん大きな魅力の本作、ドラマCD化などの企画もあるようですし、今後の展開にも期待して良さそうです。


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